私達の不安を乗せ、マルペンサエクスプレスは進んでいく。「シロヤギ、ホテルの地図って持ってる?」「持ってるよ。」ミラノのホテルだけはHISを通して予約したので、クーポン券についた地図をクロヤギに見せた。クロヤギはミラノのガイドブックと照らし合わせて、その場所を描き入れ、「ホテルって何て名前だったっけ?」「Cristaro。C・R・I・・・。どうしたのクロヤギ?」「カタカナで書いちゃった・・・。」 えっと、いっつもカタカナ表記で見ていると、看板なんかを見たときにとっさに分からなくなっちゃうかから、できるだけアルファベットで書くようにしてるんだけど、あの・・・。まあ、難しい名前じゃないから分かるか。「ミラノ中央駅の近くにも地下鉄の駅があるから大丈夫。カドルナ駅から乗りかえなしで行けるよ。オイラがちゃんと調べたから大丈夫!」 とりあえず電車の中でできる準備は整えてカドルナ駅へ到着。ううー。前にローマで地下鉄に乗った時も分かりにくかったし、ちょっと怖かったんだよね。下調べもしていないミラノでしかもスーツケースを引きながらなんて・・・やっぱり不安だなあ。カドルナ駅の長いプラットフォームを歩き、地下鉄マークのある方へ向かう。「・・・エスカレーターないね。」地下鉄マークが指しているのは明らかに下りの長い階段。見回してもエスカレーターはない。スーツケースには2リットルのお茶が2本。・・・重い。半分落ちるようにしてようやく階段を下りきり、改札の近くへ。 改札近くの切符販売機の回りは妙に人が集まっていた。見るからにアジア系の人、旅行者らしき人。みんな販売機を取り囲んでる? 販売機にはさすが観光地らしくイタリア語、フランス語、英語、スペイン語などいろいろな言葉で説明が書いてあった。が、イマイチ良く分からない。それになぜこんなに人だかりが・・?とにかく分からないながら販売機にコインを入れてみる。と・・・、コインが出てきちゃった!!なーぜーだー?違うコインで再トライ。・・また出てきちゃった。 コインを握って途方に暮れていると、(こういう場合クロヤギは全く役に立たない。)地元の人っぽいお姉さんが自販機を指差して何か言っている。イタリア語だから全然分からないんだけど・・。ん? お姉さんの指差すとおりにボタンを押し、コインを入れると・・、買えた!!切符買えたよ!!! どうやら、最初に押すボタンがあって、それを押してからコインを入れ、行きたい場所のボタンを押すという順番だったらしい。うーん、全然分からなかったよ。切符を買って自販機のそばを離れようとした私をお姉さんが呼び止める。10ユーロのお札を見せて・・・。もしかして両替して欲しいの?助けてくれたお姉さんなので慌てて財布を探ったけれど2ユーロしかない。ごめん、助けてもらっただけで全然役に立たないね。 なんとか購入した切符を使って構内へ入る。地下鉄に乗ろうとして・・「クロヤギ、どっちのホームに行けばいいの?」ガイドブックで「ちゃんと調べたから大丈夫!」のはずのクロヤギは「え?」おーい、全然大丈夫じゃないじゃん。「たぶんあっち。」いや、たぶんじゃなくて・・。ここで間違ったらショックが大きいよ。乗る前に確認しようとしていると、若い男性が近づいてきて「どこへ行きたいの?」「クロヤギ、駅名は?」「・・・・・」全然ダメじゃん!!!「あの、ミラノ中央駅の近くまで行きたいんです。」「ミラノ中央駅?電車で?」「いえ、地下鉄で。一番近いところでいいんですけど・・。」「オチェーアノ?」「それ!」いきなりクロヤギ叫ぶ。しかも日本語。慌てて「イエス」と言うとホームを指差してくれた。 またしても長い階段をホームまで下り、電車に乗り込む。オチェーアノまで3駅。教えてくれた男性は私達が下車するまでずっと心配そうに見ていてくれた。ありがとうジョゼッペ(仮名)!君のおかげで助かったよ。一見35歳くらいだったけど、たぶん本当は私より若いよね。本当にありがとう!! 地下鉄の駅からミラノ中央駅はすぐだった。クロヤギの先導でホテルへの道をたどり始める。「この道をまっすぐ行けばあるはず。」ホントかなあ?さっきも大丈夫って言って全然違っていたし、もう一回地図で確認してよ。「大丈夫。間違ってない。」ふーん、じゃあ行こうか・・・。が、駅から徒歩5分のはずなのに行けども行けどもホテルが見えてこない。「クロヤギ、ちょっと待って。もう一回地図見ようよ。」クロヤギもさすがに不安になっていたのか立ち止まって地図を見る。私もホテルクーポンについている地図を出し・・。「違ってるじゃん!!!」電車の中でクロヤギはホテルクーポンの地図からガイドブックへホテルの場所を写し変えていたんだけれど、その場所が違ってる!全然違う場所に堂々とカタカナで「クリスタロ」って書いてあるよ。 あまりのことに絶句する私。そして同じくうつむくクロヤギ。「ばっかもーん!!!」夜のミラノに私の怒鳴り声がこだましました。 とりあえず大声を出したら気が済んだので(正しい)地図に従ってホテルへ向かう。すぐ見つかる。さっきまでの苦労はなんだったんだ・・?まあ、とにかく着いたんだからいいか・・。晩御飯は駅前のマクドナルドで適当に済ませ、早々に眠る準備。腕時計はまだ9時だけれど時差があるから体内時計は深夜。いつも夜更かし気味なクロヤギならともかく、私はもう耐えられません。明日に備えて眠ります。おやすみなさーい。ぐう・・・。