ちゃと・まっし~ぐ~ら~!

2004年05月11日
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カテゴリ: 日本
本日の日記はお題が決まっております。


***
私は、この6年あまりは実家から遠く離れたロンドンに住んでいるが、それまでの約35年、京都の西陣で生まれ育った。
西陣と言えば、それが西陣織のふるさとであることはたいていの人によく知られている。
私が生まれた頃の実家には、まだ手機があり、亡くなったおじいちゃんや今も健在の両親が一日中、足を動かし、手で杼(=ひ・・・横糸になる糸を巻いた管が舟形になった胴にはまっていてその端から糸が出てくる。その糸が縦糸の間を縫うようにくぐって織物になっていく)を出し入れして毎日少しずつの帯地を織っていた。
この手機があった時代を私はまだかすかに覚えているが、幼稚園に行く頃になって、これがうるさい音のする自動織機にとって代わった。
この頃から近所では手機で織る家はだんだんなくなってきて、近所が一斉に平日の日中はこの自動織機の音が外に鳴り響くようになり、まさに一つの小工業地域化しているような場所となった。
織屋は、もちろん織機だけで織物ができるわけではなく、狭い我が家はいろいろな色の糸、同じ糸色でも若干トーンの違う糸、図案や紋紙があちこちに置いてあり、もともと狭い場所をさらに狭くしていた。

どんなに気をつけていても、この糸くずが必ずどこかについていて「今日もやられた」なんて思っていた。

昭和30年代頃には「ガチャ万」と言う言葉があったと聞いていたが、織機が1回ガチャッと音をたてて動くたびにお金がもうかる、織機を動かせば動かすだけお金になるということで、月給取りなんかやっていられない、というようないい時代もあったらしい。
しかし、私や弟が大きくなっていくにつれ、着物や帯の需要が少なくなり、今ではほんの限られた時にしか日本人は着物を着ない・・・そのために着物も帯も付属品も特別なものになってしまって、着物を最初に着る時の要り様を考えると余計手が出なくなるという悪循環を生み出した。
その着物離れの傾向は80年代中盤以降のバブル経済の破綻が拍車をかけて、我が家の稼業にも当然響いてくる。
これまでは、両親たちががんばって織れば織るほど買い上げてもらっていた品物が一気に売れなくなり、品物の納め先の会社からも「できるだけ休んでほしい」とのお達しが出るが、当然、休業補償があるわけではない。

そして、とうとう私が初めて98年の2月に実家を離れてロンドンにやってくる。
それから毎週、実家への電話は欠かしたことがなかったのだが、ある時・・・ロンドンに来て2~3ヶ月も経った頃だろうか、弟からのメールで大きなショックを受けた。
実家の織物が完全に廃業させられたのだ。
それは、私がロンドンに出発したその日のことで、京都駅まで見送りに来た両親が自宅に戻った時に取引先の会社から有無を言わせない通知があったらしい。
慌てて実家に連絡した私は「なんで言うてくれへんかったん」と母に言ったが、「いや、それはアンタに言うたかて言わんかったかてそれは同じやったさかい」と母はさらっと答えた。
財産などまったくない我が家の家計は両親2人とは言え、これからは職無しで、すずめの涙ほどの年金だけに頼る生活に突入していくのだ。


その年の11月、ロンドンに来てから初めて京都に戻ると、我が家に2台あった自動織機はなくなり、仕事場だったところに、母がなけなしの貯金をはたいて食堂と客間を作っていたが、私の脳裏には長い間そこにあった自動織機のたたずまいや音が離れなかった。
「西陣で育った子は織機の音がしている間は静かに寝ているが、織機の音が止まると途端にむずかり出す」と言われたその音は我が家からは永遠に失われたのだ。

ロンドンに来る時に持ってきた大事な本で 「タイからの手紙」 という本がある。
ある時、久しぶりにこの本を読んでいて、上巻を読み終わってなにげなくカバーのところを見たら、そこに2本の糸くずがはさまっていた。

この糸が、両親の腕が、今の私をずっと支えてきてくれたと思うと、その2本の糸くずから言いようの無い懐かしさや愛着が電気のようにびりびり伝わってくるのを感じた。
こうして、私の洋服には、かつてのなりわいの名残りである糸くずがつくことはなくなってしまったが、耳の中の織機の音が消える日は私自身がこの世から消える日なのだと思っている。
***

私の次は、いつもみずみずしい季節の風物やかわいいお子さんの毎日に目を留めながらも、決して自分を見失わないところが大好きな 移りゆく季節の狭間さん にバトンをお渡ししました。
どうぞお楽しみに!





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Last updated  2006年02月11日 20時17分18秒
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王島将春@ Re:また祭日に書いている・・・(11/23) はじめまして。福井市在住の王島将春(お…
背番号のないエース0829 @ Re:初夢(01/03) 今回こちらのtitleです。 もしよろしかっ…
誰やねんっ20号 @ Re:また祭日に書いている・・・(11/23) 御無沙汰しとります。 気がつきゃもう年…
べる@ Re:また祭日に書いている・・・(11/23) ってことは次は12月23日? 早くアジ…
yokko_888 @ おかえりなさ~い 一気に寒くなりましたが、ちゃとさん、お…
にゃんきち@ Re:また祭日に書いている・・・(11/23) アジアやオセアニアは日本から近いですよ…
ちゃと0508 @ panasea75さん パナセァさん、おこんばんは~~~。 そ…

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