「Marigold Sky」「Do it for Love」「Our Kind of Soul」の3枚の、80年代に爆発的なヒット曲が連発された頃のアルバムに比べると、まったく別モノの、かなりアコースティックを多用したみずみずしい音であることを再発見する。 たぶんHall & Oatesの、80年代の、ただ売れまくっていた時代以降、90年代のデュオ休止・ソロ活動等の十分なクーリング期間を経て、また地に足をつけてやりたくなったという静かな情熱が感じられるのが上の三部作。(いや、別に三部作として作られたわけではなくて私がそう思っているだけだ) 特に「Marigold Sky」。 聴き始めた当時、好きな曲とぜんぜん感銘を受けない曲との落差があまりにも激しく、決して常時聴きたいと思えるアルバムではなかったが、これを聴いたクマイチの評価は私が思う以上に高くて意外だったが、それから10年経って、なんとなくこのアルバムに秘められた強さと繊細さの二律背反のようなものがわかるような気がしてきた。
本当は今、聴きたいのはこれらのアルバムだけではない。 この70年代の中盤以降、フォーキーで土の匂い+天然の音のフィラデルフィアソウルっぽい作りからメタルでプログレ的な試みに移る時期の、2~3の実験的なアルバムも好きだ。 その後、ソウルを少し箱に閉じ込めてロック色のかなり強い時期を越えた後の西海岸寄りのサウンドが光を放つ「Along the Red Ledge(赤い断層)」と、その後にサイケ・ディスコ色に溢れたクレイジーさが結構ステキな「X-Static」からは「Wait for Me」も誕生。 そして満を持して1980年に「Voices」から「Kiss on My List」「You Make My Dreams」「You've Lost That Loving Feeling(ふられた気持ち、ライチャス・ブラザーズのカバー)」が生まれ、彼らはRock'n Soulの申し子となっていったのだ。 彼らのアルバムで、もしも「怒涛の勢い三部作」を挙げるとしたら私にとってはここに挙げた3枚かな。
Hall & Oatesといえば「Private Eyes」や「Maneater」を知っているという人が今でも大多数ではないかと思うのだが、このあたりのアルバムは逆に私はもうほとんど聴くことがない。(聴かなくても勝手にラジオでかかっていることも多いし) 90年代以降の「Change of Season」辺りはいちばんかなり苦しかったことと思うし、それ以降はなかなかナントカドームでライヴをすることもなくなった。(私にとってはそのほうがありがたい) しかし、今も年に100日超のこまめなライヴ(ほとんどアメリカだし残念だ・・・昔のような大きなハコではないから余計に聴きに行きたいが)に明け暮れるHall & Oatesにあらためて私の敬意を表したい。 彼らもそろそろ60代に突入する.