第1話 食糧問題(1)



高層マンション群が立ち並ぶ住宅地。人口が増えすぎ生活の場所を空に求めた。生活の場は家族の数によって広さと場所が決められ、住宅地を中心に娯楽施設、工業地帯、研究学習施設、など完璧に計画された都市により不必要な移動時間や無駄な渋滞などがなくなった。ほとんどのものが自動化・機械化され、労働は成人男性が週2回、1回3時間程度軽作業を行うだけで必要なものはすべて支給された。通貨という概念がなくなり、義務と権利だけで動く世界になっていた。

なに不自由なく暮らす毎日。そこに疑問を持つものも少なくない。

「おはよう」と彼はいった。彼には妻と今年9歳になる娘がいる。今日は出勤日ではない。
「おはよう、今日は11:00からグループ授業があるの。だからルームは私が使うからお父さん使わないでね」
「今日は何もないからゆっくりしなさい。でも宿題は終わったのか?」
「終わったよ。昨日のうちに済ましたもん。提出もしたよ。」
「そうか。さあ朝ごはんでも食べるかな?」そういうと彼はボタンを押した。目の前までロボットが食事を運んでくる。「そういえば俺、畑って見たことないな。どこでこんなに食料が作られてんだろう?」「どっか居住地区以外でぱぱっと作ってんでしょ。それこの時代畑とかいらないんじゃないの?」と無関心な妻。
「そんなわけないだろう。100数十年前には遺伝子組み換えとかで変なもの食わされてるとか騒いでたんだからさ、変なつくりかたしてたら大変だろう」
「まぁ食べられればいいんじゃない?とりあえず野菜や果物は土で育つ。動物は草や肉で育つって覚えたんだし」
「理屈はそうだけどさ....」と腑に落ちない感じだった。

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