食糧問題(2)


高層マンションには毎朝1台の緑色のコンテナが止まる。それはどこから来てどこへ行くのかわからない。それ以外には住民がオンラインで買った趣味のものや服などが運ばれてくる赤いコンテナがある。赤いコンテナのほうは居住区の中央に配送センターがあり発送配送を一手に行っている。送るときも赤いコンテナもらうときも赤いコンテナだ。クリスマス時期になると赤いコンテナにはおもちゃの広告がたくさん入る。

彼は緑色のコンテナを追いかけたかった。しかし、実際には”できなかった”。できない理由がいくつかある。ひとつはコンテナ用のチューブは人が通ることはできなかいからだ。マンションとマンションを結ぶ透明なチューブの中をコンテナが行き来する。当然人が入れば次のコンテナに押しつぶされる。セキュリティーが厳重で中に入ることは不可能である。また自家用の車というものがこの世界にはない。移動は拠点と拠点を結ぶジェットカプセルで行う。自宅を出る前に行き先をIDカードに登録しマンションの入り口からカプセルに乗り込みIDカードを差し込むのだ。これにより個人の居場所を特定することができるだけでなく、危険な場所などに不用意に立ち入る危険性を回避できる。しかし自由気ままなドライブというのは不可能で、どうしてもであれば自宅のルームで疑似体験ができる。安全快適なドライブだ。

何もかも自由ではあるが、実はすべて管理されている世界なのである。しかし彼の探究心は消えなかった。そんなに遠くないと考えたのか歩いて緑のコンテナを追い始めた。毎日少しずつ追いかけ、前日いったところまでカプセルで移動、そこからまた追跡の日々を繰り返した。10日後彼はある研究所の前にいた。
[計画推進機構・食料研究所]
「なんだ計画って?」そういいながら研究所を覗く。そこには緑のコンテナが山積みされている。
「やっぱりここからきてるのか。でもそれにしては小さいな。」
「どうしましたか?」と研究者らしき人が彼に声をかける。
「いや、この緑のコンテナがどこから来るのか興味がありまして。」
「結構興味を引くようですがここまで来る人は珍しい。ですがここには何もありません。お帰りください。」
「そんなことはないでしょう?食べ物がここで作られているか加工されているんでしょう?私はたべものが作られるところを見たことがない。よかったらぜひ見せてほしいのですが。」
「そんなに食べ物が作られているところが見たいのなら、netで調べればいい。ルームで芋ほりでも果物狩りでも体験できる。」
「見たところ小さな施設ですね。」こんなところであの大量の人数の食事をまかなえるとは思えない。
「もういいでしょう?お引取りください。」
「何を隠しているんですか?ほんの少し見たいだけじゃないですか。すこしもだめですか?」
「帰れなくなりますよ。」
「いいですよ」この時代にそんな脅しが通用するわけがない。
「ではしかたありませんね。少しだけですよ。それと本当に帰れなくなりますよ」
「はいはい」

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