食糧問題(4)


「ちゃんとした形の食べ物があるじゃないか」
「すべての食品を完璧な状況で育てられるかな?野菜であれば日照、肥料、気候、水分。動物であれば運動用の広大な土地、食べ物、健康管理。この人口多すぎる地球ですべての人が十分な食料をとるためには十分な資源がもう地球にはない。ならばそれぞれひとつ、一匹を完璧に育てコピーを作るほうがたやすい。しかも量も質も十分なものが供給できる。」
「ここにあるのはオリジナル?」
「そういう言い方もできるな。しかし、地球上の生物にオリジナルが存在するのか?人間でも両親からのコピーであり、植物動物も同じようにコピーだ。アメーバは1細胞で1個体だ。動植物の細胞も1細胞が1個体と考えればさっきの部屋で見たものは1個体の複数コピー群であってコピーの一部ではない。」
「それはいいわけだ!!」
「そう。いいわけだ。だから人々は知らないし知らせない。そのほうが平和だからだ。」
「...」
「しかしこのプロジェクトにも欠陥がある。さっき君が言ったように”オリジナル”がいる。長期間コピーし続けると欠陥が出てくる。そうすると一度ガラスケースを空にしてオリジナルを入れる必要が出てくる。」
「...」
「話は変わるが、人間にとって一番バランスの取れた食料は何かわかるかな?」
「いや...」
「人肉だよ。人間が生きるために必要なものがすべてそろっている。そのためには健康な”オリジナル”が必要だ。だが、死んだ人間の肉はいやだろう。」
「....」
「ちょうどオリジナルの肉が切れかけたところだった。いきのいい人間がほしかったところだ。どうかね、ふふふふふ.....」

その後彼が家に帰ったかどうかはわからない。何しろ人間の顔をしたロボットが普通に生活する世の中だから。

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