第5話 楽園計画(1)


「冗談でしょう?」
「もちろん冗談だ。オリジナルなどなくてもデータさえあればすぐにすべての物質が作り出せる時代だ。

しかし。自分たちの食材がすべて試験管の中で作られていると知っていい気はしないだろう。だから今まで秘密だったのだ。」

「今まで...」

「世界が大きく変わろうとしている。倫理観が一変する。世界が『楽園』になる。」

「楽園?」

「そう私たち研究者は『楽園』と便宜的に呼んでいる。実際にはそこが楽園かどうかを決めるのは自分たち。だが聖書や、そのほかの教典で示されている楽園は本当に楽園か?
衣食住が保障され、天災の恐怖もない。老いることも死ぬこともなく病気に苦しめられることもない。仕事もしなくていい。」

「それが実現できれば最高じゃないですか?」

「そうだろうか?生きる意味はどこにある。最低限の衣食住すら危ぶまれていた時代なら確かに楽園だろう。しかし今はどうだ?ほぼ生活は保障されている。これ以上何を望む」

「...」

「しかし、もっと「頭のいい」人たちは、自分が神になろうとしている。」

---別の場所 同じ時間----
退院してからすごく調子がいい。他の友達といっしょに山へ行ったりするようになった。お医者さんが退院するとき僕に言った。「多少のケガなら大丈夫だよ。」って

「多少ってどのくらい?」と聞くと
「手と足一度ずつなくなっても換えがあるから。でもおなかの換えはほとんど使っちゃったから、気をつけてね」って。

僕はケガをしても大丈夫なんだ!!無敵のヒーローみたい。みんなもこんな風になればいいのに。

----別の場所 同じ時間----
妻の記憶はなくしたと言うより、最初からなかったような感じだった。でも生活する上ではまったく問題がなかった。と言うより、自分があまり家にいなかったこと、そして妻に感心がなかったことを痛感させられた。若返って自分とは不釣り合いな容姿。違和感が心の中に押し寄せる。そして、「自分も若返ってみたい。そしたらもう一度やり直せるかも」という新たな感情。

「何をやり直す?」

自問自答しても答えが見つからない。

「何度やり直す?」

自分が納得できるまで

「納得したら...自殺する?」
いやきっとまた若返る。

「それは永遠に繰り返す」
地球が壊れるまで。

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