離人症の器

離人症の器

君と僕

<君>


親指

君の負う傷の重さをはかれずに ぬぐえなかった震える涙




あのときの笑顔の影に気づけたら 君は今でもここにいたかな


約束

指きって約束げんまんしたのにね 嘘さえつけずに傷つけた


一握の砂

つまらない嘘を重ねて得たものは 重みさえない一握の砂


配達

届けたいけど届かなくて綴るのは 手紙代わりの物語


握力

つめのあと赤くなるほど握った手 力をこめても届かなかった


夢の憧憬

本当はただただ力で引き寄せず もっとそっと守りたかった


後戻り

声にした言葉の重さもはかれずに 傷つけるほど求め合った嘘


荷物

相槌を打つ君の顔に問いかける 僕の言葉は意味を成してる?


さよならの夕暮れ

去る君を追いかけようか迷ううち 呼ぶ言葉さえのどの奥底


いい人

好きだって言っても困ると知っている 詰めの甘さで君はいい人




眠い目をこすって現に帰りしは 遠い笑顔の君、白昼夢


重量級

君と僕天秤ばかりに乗っかって 勝つか負けるかシーソーゲーム


あっちむいてほい

うつむいてかちりとはじいた爪の音 より目がちなる君の目と目


誓約

声にした先から嘘になっていく 誓いの言葉を口にしないで
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行き止まりの関係

「仕方ない」口にすればそれまでの 言葉を重ねる二人の絆
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振り切れる針

心電図心の針を探るより あからさまなる君の表情
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名前

さんずいの多い君には不似合いに 頑固なまでに泣かずに泣けずに
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見えないくせに

そんなのは子供じみた想いだと 言ってくれるね知りもしないで
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台風一過

台風の目の中のように静かだね 想いを寄せる君の心は
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望春風

翼ならもう君の背についてるよ 羽ばたく為には一つの決心




<僕>


逢魔が時

夕暮れの迫り来る道迷い道 あなた阿呆ねとカラスの一声


散髪

ばっさりと切った髪の毛見下ろして 忘れたそぶりの一人芝居


摩滅する毎日

暗闇に星さえ見えない静かな夜 聞こえてこないか壊れゆく音


剥離

銀色の冷たい月に照らされて 泣いているのは剥げ落ちた心




傷ついたこの体でも歩けるよ 君が待っててくれればだけど


痕跡

つめ切ったあとのひっかき傷の白 ただただ皮膚を流れて消える




夢うつつまどろみながら聞く声は 懐かしくとも今はもうない


罪と罰

目を閉じて忘れられたらいいのにね 責めているのは思い出だから


かすり傷

つまずいたその石ころを手に持って 遠くへ投げたら振り払えるかな


傷口

かさかさのひび割れかかとで踏みしめた 冷たい廊下と近づく闇夜


でんぐりかえし

澄み切った空と野原の狭間にて どこへも行けずにでんぐりがえる


懺悔

言えずじまい言葉並べてコレクション 泣いてもいいよと想いのかけらは


夜行

街灯をみちしるべにして歩いても 帰る場所さえない夜を行く




夜浅く仄暗い空どこまでも 行ける気がした月などなくとも
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悪意

降り注ぐ言葉の雨に穿たれた 心の声が届かず消えたら
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へそまがり

君の前いるのが辛くてかくれんぼ あまのじゃくでも許して欲しいよ
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こどく

寂しさが引力みたいに作用して 寄り添いあったらあったまるかな
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熱病

さめやらぬ熱病一つ胸に抱き 夢に祈るは刹那の逢瀬
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無題

君に寄せる優しさだけを信じると 誓った浜辺に寄せるさざ波






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