つららの戯言

つららの戯言

月影第9番 猫と庄造と二人のおんな


出演:高田聖子 土屋久美子 中谷さとみ 利重 剛 

感想:

 月影ももう9回。1年に1本のペースだったから、9年か・・・。1回を見たときは語呂的に十番なのかと思ったら本気で9番だもんね。その間に高田さんもテレビにまで呼ばれる女優さんになられてしまって。

 今回は駄目男の利重さんを取り巻く女二人と1匹の雌猫の話。

 世に言われる「だめんず」の利重さん。名ばかりの小説家、引きこもり、マザコン、猫のリリーばかりを溺愛する。猫リリーに言わせると「人間の雌を愛すること、幸せにすることができない駄目なやつ」
そんなやつと知りながらも、離れられない前妻の高田さん、現妻の中谷さん。
 どちらの女たちもダラシナイ男に嘆きならも、猫のように気ままになりきれず結局男の所に帰りたいと願う。
 その溺愛されるリリーは、猫の本能の赴くまま。眠くても目の前にえさがあれば食べちゃうし、吐きたきゃ何処でも吐く。サカリが付けば外に出て子供をつくって帰ってくる。
 そのリリーが唯一恐れる存在。それが駄目男の母親。前妻と別れさせ、財産目的で今の嫁と娘と結婚させた女。


 高田さんの一人芝居の部分が多く、「高田聖子」を堪能できる。細かいことで笑わせたり、嫌な女を見せたり、寂しさバネに踏ん張っている感じもいい。
 中谷さんも新感線では見ることの出来ない、台詞の量と変わらむテンションの高さでちょっと見直した。いつもだと笑わすことが重点で芝居をしなければいけない場合が多いから。
 リリーの土屋さんは初舞台とは思えないほどのどうどうたるもの。ちょい台詞回し的に不安定な感じがしないではないが、あの抜群のスタイルと猫らしい身のこなしは、駄目男じゃなくても猫かわいがりしたくなる猫であろうと想像させる。
 利重さんに「駄目男でも好きっ!」って思わせるようなところが少ないのが、少々物語りが薄い感じにさせる感はある。

 きっともっとどろどろとした感じしようと思えばできたはずなんだけど、あえてそういう風には持っていかずさらっとした感じで。最後がよくわからない感じで・・・中谷はなぜバンドの人を殴ったのか・・・母は彼女に何をいったのか・・・。どうして3人+1匹が一緒に住むことになったのかも。

 春菊さんの脚本は、駄目男を容認する、駄目な女も出てくるんだけど余りどろどろとヘビーにならないのが特徴なんだろうか?一番恐ろしいのは男の母だと思う私。

 それにしても、このリリーの動きの猫らしいこと。この芝居は猫を飼ったことのある人間とそうじゃない人間とでは印象が違うかもしれない。
 気分屋で、自分勝手で、でも憎めないいとおしい存在。2,3日家を空けるとくんくんと匂いを嗅いでもう一度飼い主と認識するところとか、慣れない家ではじっと部屋の隅に隠れて出てこないところとか。まるでうちの椿を見ているようだ(笑)

 高田さんを生かすための舞台の「月影」のはずが・・・最近ちょっと違う方向に行っていたけど、今回はまっとうに面白い芝居でしたね。次回の最終回は「女囚サソリ」だとか・・それじゃ新感線じゃん!さてさて来年の春はどうなりますやら・・

 点数5点(かわいらしいリリーへ)












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