当てとフンドシは向こうから外れる

無料を疑う

●駅の3Kといえばどこか? 東京駅八重洲北口に新しい飲食店ゾーンができた。運営会社は?鉄道会館といって、東京駅名店街などを運営するJR系列の企業だ(この企業名では優秀な人材が入らないのではないかと、勝手に心配してしまうが・・・)。 この飲食店ゾーンは1Fの「キッチンストリート」と、B1Fの「黒塀横丁」とがある。どちらもテナント選択ではかなり工夫していて、その意気込みは充分伝わってくる。
 実はここで注目したのは、1Fにあるトイレだ。 駅のトイレといえば3K(暗い・汚い・怖い)の典型で、女性はもとより男性でも敬遠する場所だった。それが見事に美しい空間として、成り立っている。その訳は、有料(飲食店利用者は、専用コインを各テナントでもらえば無料になる)にしたからだ。 入り口には専任の係員がいて、飲食店利用者かどうかを尋ね、コインをもらい忘れると渡してくれる。

●無料を疑う トイレといえば、飲食店の従属物という発想で作られているので、大企業が運営する規模でもない限り、一般のテナントビルでは大部分がお粗末な場所だった。それはお金を生まない場所だと考えてきたからだ。 シャワートイレ(これは日本企業の発明で、アメリカでもまだ普及していない)が一般家庭にほぼ行き渡り、現在は企業のトイレにも既存施設ではリフォームが進んで普及している。また新築ビルではかなりこだわったトイレが増えている。 また価値を売り、顧客単価が高額でも集客できているお店(レストラン・ブティック・デパートなど)ではトイレが美しいのは当然で、どれだけこだわりを見せるかを競ってさえいる。それは生活レベルの高度化に対応するだけでなく、自社の価値やこだわりをアピールする場所と位置づけられているからだ。

●有料だから需要が生まれる
 私は胆石の内視鏡手術を受けて以来、食後突然お腹がゴロゴロすることが増え、トイレに駆け込むことも多くなった。すると汚れたトイレではテナントの空室が目立ち、人の利用が少ない飲食店が多いビルや施設であることに気付いた。
 50円でも100円でも構わない。お金が必要な分、とても快適で美しく、お化粧を直すパウダールームにもなっているトイレがあれば、そこは新たな収益を生む。
 経営者の価値作り・・・これまで無料が当然視されていた場所やサービスを、有料にできないか疑うことを知っている。


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