Laub🍃

Laub🍃

2010.01.17
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カテゴリ: .1次小
その家に所属した時、挨拶は「ただいま」だと教え込まれた。
顔を出した程度でもそう言うべきなんだと。

もともと住んでいたイエにはおれを疎む家族しか居なくて、ただいまと言ったらおかえりと言われる環境に飢えていたおれはその家ではじめて温かさというものを感じた。

毎日の奉仕も必死で頑張った。
ノルマを果たすためにどんなことでもやれた。

それも、おかえりと言ってくれるその人が居ればこそ、その人が褒めてくれて大変だったろうと言ってくれるのを夢見ていたからこそできたことだったのに。

「僕はそんなことやってなんて言ってないよ」

そんなの、ない。

「君は頭を冷やしたほうがいい」


あのあたたかな声で、お帰りと。

冷たい池にこわばった手で頭を沈められながら、おれはひたすらこのまま凍えて死んだらこの人は受け入れてくれるのだろうかなんてことを、考えていた。

『ただいま』


声の泡だけは、上へ登って届きますように。





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最終更新日  2017.06.06 02:55:01
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