Laub🍃

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2010.02.14
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カテゴリ: .1次小
犬が欲しかった。


友達の家には犬がいた。
自分は何もないと言う彼をいつも明るくさせていたのがこの犬。


彼の言うことだけを聴く賢くて愚かな可愛くて格好いい犬だった。


彼は背中に乗せてもらえたけど、僕は駄目だった。


そんな彼が妬ましくて、そんな犬が妬ましかった。


僕は人を「君だけは特別」ととく万人の犬にはなりたくなかった。
それは兄の仕事だったから。


そんな彼が、犬を喪った。



彼の命令をきかなかったのははじめてのことだったという。


「君だけは特別」


泣き暮らした彼が久しぶりに学校に来たとき、彼からそういわれた。
学校に来ないで泣き暮らしていた彼のもと、毎日お見舞いとプリント届をしていたのは僕だったから。


彼は僕の言う通りに学校に来てくれた。


何もやる気が起きないらしい彼は、唯一僕のお願いだけは聞いてくれた。


嬉しくて、何かと世話を焼いては彼の為になりそうな勉強方法をすすめたり僕たちの仲を深めるような旅行を企画したりという仲を続ける事10年。


僕は彼の忠犬ハチ公とまで呼ばれるようになっていた。


彼は僕の主と言う名の犬だということを、二人だけが知っている。


そして、彼の中に未だに犬の影がちらついていることを僕は知っている。
僕がどれだけ尽くしても未だに塗りつぶせない影。




道路でいつも彼は僕と車の間に入ることが少し前は悲しかったけど、最近は歯がゆくてたまらない。


最近は彼の目線をとうに超えたのに、彼は未だに僕を見下ろすように接してくる。


だからそれを紛らわすように、僕は犬がするように、あちらこちらに目線を送る。

「…ああ、もうそんな季節か」
「うん。受験期間は花なんて見る余裕なかったもんね」




犬には、できないことだ。





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最終更新日  2017.05.21 17:57:52
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