Laub🍃

Laub🍃

2010.04.06
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カテゴリ: .1次小
白うく、白うくしてほしいのよ。



そう言う、日に日に白くなっていく彼女の肌と髪にすがって、僕はよく泣いた。







姉さんはよく血を吐いた。

だから僕は彼女の服をよく洗う。

外に出られないどころかベッドからも出られない彼女を僕は愛していた。



小さい頃から、身体の弱い姉さんの為に母さんはお伽噺を作っていた。

そこは小さなお城で、姉さんは外に出ない深窓の令嬢。



外に出る僕は、姉さんのために日々の楽しい話を話すことが禁じられていた。


だから僕はいつもその部屋に入ると、外での楽しい記憶をすべてまっさらにすることが義務付けられていた。





だけど、じきに全てを忘れさせてくれるその部屋を愛するようになった。



外は怖かった。
だけど、その部屋では僕は弱くてよかった。
弱くても、彼女よりは強く居られたから。



姉さんはもうその部屋に居ない。


死んだわけじゃない。外国に行って、難しい手術を受けて、そこで療養生活を続けている。



床に残った落ちないシミを、今日も粉とスポンジといろいろなもので消しながら、つんとした臭いのせいで僕は泣いている。



早く、早く戻って来てよ、姉さん。




でないと僕が泣く理由が、そろそろなくなってしまう。





シミが消えないうちに、はやく。


僕にしろくさせて。





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最終更新日  2017.05.21 19:08:28
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