Laub🍃

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2010.11.08
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小さな、人気のない海岸の岩場。
男が抱えた幼女を水中に落とす。

幼女はそこを静かに泳ぎ回る。
魚のように鮮やかな動きで。

「いつ見ても見事だな」
「……どこを見て言ってる?」
「さあな」

幼女の体は水を吸ったかのようにぐんぐん膨らみ、女らしく膨らんでいく。

同時に彼女の周囲は一瞬白くなっては周囲の水と溶けこんでいく。



「毎度面倒だな」
「そうだな。お前みたいな仕組みだったらよかったんだが」



鳴生行子。水の能力者である彼女は、周囲の空気、食物、そして水そのものから水を吸い上げ、自在に射出することができる。
もっとも、目の前の男にとってその能力はもう少し下賤なものとして捉えられていたが。

眠子の、水を吸い上げている間は豊満な、射出しきったあとは純粋無垢でまったいらな体を楽しむ男の名は鎖灯享。

彼の能力は……


「乾かしたのに冷える…」
「困ったな。薪に使えそうなもんがない」
「お前の能力を使ってくれ」
「はいはい」

行子の体を享は包み込む。

しかし二人の目は冷えている。


「これくらいでいいか?」
「ああ……うわっ、お前の髪冷たっ」
「誰のせいだと思ってんだ」


享の能力は、触れたものの温度を吸い取ること。熱さでも冷たさでも自在に操れる。


「そこらへんの海水で氷でも作ったらどうだ」
「いや……証拠になるもんはなるべく残したくない」


二人は追われている。
冷えた目で、常に周囲に警戒網を張り巡らす二人の耳に声が届く。
聞き慣れない声。


「……?」
「…………!」

「……享、聞こえたか」
「……ああ…一般兵か?それとも市民の生き残りか…接触は……」
「少し様子を見てみるか」
「分かった」


二人の元軍人は、互いに目配せをしあい、一歩歩き出した。





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最終更新日  2018.03.06 07:58:36
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