Laub🍃

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2011.03.17
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カテゴリ: .1次メモ
「あれ、腐れ外道さんじゃん」
「おはよー腐れ外道」
「おはよう」


「この問題の答えを言いなさい、腐れ外道」
「正解だ、よく予習してきたな腐れ外道」
「それじゃあ今日は出席番号××の腐れ外道さんお願いね。」
「はい」


「腐れ外道ちゃんこれから部活?」
「腐れ外道ちゃん、あの先輩怖くない?」

「うん」











 何故かある日から、私の名前は「腐れ外道」に統一されたらしい。


 初めは何の冗談か、嫌がらせかと思っていたけれど、言っている人達の余りの邪気の無さを見ると、そうでもないようだ。次に私は、私の耳と頭を疑い出した。
 苗字も、名前も、あだ名も全て私の脳内で腐れ外道に誤変換文字化けする。

 初めの内はきちんと見えていた文字でさえ、今では書いたそばから『腐れ外道』になるのだから笑ってしまう。

 自分の名前を書く欄に、誤って腐れ外道と書きそうになったことも一度や二度でない。
 ……ただ、それがもしも私の名前として認識されてしまったらぞっとしないので、そうならないよう気を付けているが。




 今ではもう、それが1年目になる。

 そうなれば、段々と自分の名前など、薄れていく。

 日常生活で腐れ外道などと言う人など居ないのだし、むしろありがちな名前に悩んでいた私にとってはありがたいことなのかもしれない。

 親の苗字イコール自分の元々の苗字だということは、一応ぼんやりながらも認識はできているし。



 ただ、一つ怖いことはある。

 私が発する誰かを呼ぶ言葉もまた、『腐れ外道』になっているのではないかということ。
 だから私は、誰の名前も呼べない。

 クサレゲドウが、異常な私が誰かに伝える言葉になる時点で、腐れ外道になってしまうのではないかと。
先輩とか先生とかあなたとか君とかあの人とかあの何とかな人とか、そういった代名詞で意外となんとかなってしまうものなので、今日も私はおかしな名詞の中を歩いている。






 もしかしたら、そのときこそ、私は自分の名前を耳に入れられるのかもしれない。







忌み名を呼んで。





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最終更新日  2015.06.29 01:20:53
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