Laub🍃

Laub🍃

2011.04.27
XML
カテゴリ: 🌾7種2次裏
「他のチームと合流した方がよさそうだな」

僕達のチームは、7人で始まった。








僕達は冷凍保存されて、人類が滅んだ後の地球にやってきてしまったらしい。

メンバーはとても綺麗な美鶴さん、
ガイドの熊川さん、卯浪さん、涼さんに、
元気そうな吹雪くん、
そして僕だ。

あとの3人は、『解凍失敗』していたと言う。


3人を、皆で埋めてあげた。


それからすぐのことだった。

「……それ、使うんですか?」
「ああ。資源は有効活用しないといけないだろ」

その人たちの荷物を、何のためらいもなく卯浪さんと涼さんが使い始め、僕達はぎょっとした。

「……でも、私達も生き残れるかどうか怪しいんだから、仕方ないわ。
 丁重に弔って、ありがたく使わせてもらいましょう」
「美鶴さん…」
「……鷹。……まずは、俺達が生き残らないとだ」
「吹雪」

僕だけが、覚悟が足りないのかもしれなかった。





3人の遺体が掘り返されていた。
それを見て涼くんは移動を強く主張した。

「…いつ状況が変わるか分からない。シェルターや他のチームを探すべきだ」
「涼お前せかせかしすぎだろ!もっと地面固めて行こうぜ」
「……」


まるで誰かを呼んでいるみたいだと思った。







「鷹くん、これいけるわよ」
「美鶴さんチャレンジャーだなあ…」

食材を美鶴さんや吹雪くん、涼さん、卯浪さんは何でも試してみる。
僕も、吹雪に試してみろと言われて口に突っ込まれた。

「……おいしい!」
「だろ!よし、今日はこれの鍋で行こうぜ!」
「そうだね、じゃあこっちの野草も入れてみる?」
「おう!」



 一頻り食べた後、僕は数日前に見付けた狼のような、犬のような動物の所に差し入れに行った。


「……その子の調子どう?治りそうかしら」
「治るといいけど…」


前足の血は少しずつ薄くなっている。包帯もあまり変えなくても大丈夫そうだけど。


「……なあ。そいつが、死体を食い荒らした犯人じゃねえのか?」
「……違うと思うけど…」
「どうだか」


涼くんが砥いでいるナイフを、いざとなったら止めたいと思った。







犯人は、狼じゃなかった。


「卯浪さん、後ろ…」
「……ちっ」


大きな虎だった。

「涼くん!?」

虎に向かって発砲している卯浪さんを置いて、涼くんは突如走り出した。
茫然としている僕の首根っこを強く掴んで。

「ちょ……涼、くん……っ卯浪さんは!?」
「あいつは武器を持ってるから大丈夫だ」
「それでも…っ」


涼くんが卯浪さんを疎んでいるのは傍目でも明らかで。
ここで離れたら二度と会えない気がする。


「……まずは生き残らないと、だろ」
「…え!?」
「……お前らがどれだけ死に急ごうが勝手だが、俺は他に目的があるんだ」

ぎろりと睨まれて、伸ばした腕が竦んだ。

「……お前と吹雪と美鶴は一緒に居たい。俺はあいつらと合流したい。
 その為に一番の解がこれだ」
「……っ」
「他の奴らには言うなよ」







 その後少しして、ぱんぱんと高い音が少し空に響いて、静かになった。





 あれから15年。美鶴さんと吹雪の間には可愛い子が生まれて、一緒に暮らすようになった犬達も大家族になった頃、僕達はやっと春のチームと合流できた。



「お前……もしかして」
「……!」

生真面目そうな青年だと思った。
どこか尖っているのに、妙に天然そうな、……未だにどこか育ち盛りのような印象を与えるところが、安居と名乗った青年と、涼くんは似ていた。




「……そっちのチームは、ガイドは3人じゃなかったのか」
「……もう1人は、あいつだ」
「…あいつ?」
「……まさか…」
「未来に来る直前お前らに馬鹿みたいな発破をかけたあいつだ。
 肉食動物の囮にした。その後は知らねえ。運が良ければ生きてるだろうが、顔を合わせないで15年経つ」
「……そうか」

あの時、故意に見捨てたことを、冬のチームには言えなくても……彼には言えるようだ。
僕は聞こえないふりを続けた。

「人の声がするからあいつかと思った。……顔を合わせてみればお前らだ。昔から見飽きた顔だが、安心した」
「お前はキャラが変わってなさそうで安心したよ」

 ……けれど、涼くんがふと笑いをもらしたのを見て。
 あ、若返った、と思った。


 面倒そうに言う涼くんだったけど、その背中はどことなくしっぽを振っている犬を思い起こさせる。
 微笑んで言葉を返す彼は苦労してきたのか白髪が多く、涼くんに向かった微笑む顔に僕は、孫を見守る老人を重ねてしまった。


「……ありがとう。多分僕も、皆も、そう思うと思う」
「別に。そういうキャラの俺がやってやった、それだけだ。……皆って…他のチームには会ったのか?」
「いや、まだだよ。チームは、僕たちが急遽『別々のチームに振り分けられる』ことになってから1つ追加されたのは知ってるよね」
「ああ。-ふざけた話だ、俺達と同じ季節の名前を冠してる一般人なんてな。……しかもそいつらのお守りを任されたのが、行きたくないと叫んでいたあいつと、どうでもいいが口癖のあいつだ」
「どうする。そいつらを捜すのを次の目標にしてみるか?」
「……ああ。ここにも、数か月定住していたが……食糧も増えてきたし、いいだろう」
「……丁度いい」


 僕達を置いてけぼりに話し込む、ガイドの人達。
 ……唯一源五郎くんと言う人だけが、犬たちをちらちらと見ていた。

「……源五郎。気になるなら撫でてきたらどうだ」
「…後でお願いするよ」

 動物好きな人に悪い人は居ない。僕はなんとなく彼に好感を持った。

当の犬たちはと言えば、無邪気に春のチームの人達に遊んでもらっている。


「……花さん、でしたっけ?あなたも、撫でてみますか?」
「…いい、んですか?……」
「……?勿論」
「……!」

彼女は犬を数回撫でて、静かに泣き出した。

慌ててその様子を隠そうとする僕に、犬達が後ろから追突する。
どすどすと埋もれる僕達の様子に、花さんは小さくあはは、と笑った。



そうして僕達の旅は、新たな局面を迎える。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018.02.24 22:57:26
コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: