Laub🍃

Laub🍃

2011.05.01
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カテゴリ: .1次メモ
今年はー今年も、花見をせずに花が終わった。
 上野公園の祭りのような会場に出かけてみたい気持ちもあれば、いつだったか、湖の近くの桜の木の下で、父の友人の子供たちと遊んでいた時の記憶をも思い出す。
 そして6つの頃からずっと、成長するたびに桜に見守られていた記憶を思い出す。

「どうして私はこんなところに縛られちゃったかなあ」
 山奥、囲むのはコンクリートのトンネル。
 ここで私は、ずっと私を轢いた男を待っている。

「……チチチ」
 小鳥がたまにこちらを見て逃げ出す。
 私の活動範囲はトンネルの端から端までだから、別に追おうとも思わない。そもそも鳥を殺す動機もない。-遊び半分で来た連中は相応に脅して帰すけれど。



 小鳥が何かを運んできたようだった。これは…桜の花?
 そういえば、聞いたことがある。都市開発が進んだせいで小鳥は餌を求めて花の首を落とすようになった、って。
 偶然なのだと思う。だけど、手土産のようにも見えた。

「こっちこい、こっち」
 懸命に祈る。絶妙にぎりぎりな所で花は放置されている。生殺しみたい。死んでるけど。
 祈り続けた結果、太陽のもとから私の領域である薄青い影のところへその花はやってくる。

「……ふふ」

 いつ枯れるか分からないそれは、ちょっとだけ魂の温もりを持っていた。
 いつも恐れられるか馬鹿にされるかのどちらかだった幽霊の日々では、ちょっとしたことも幸せになる。
 いつか成仏出来る時が来たら、春がいい。

 自由に空を飛んで、あの小鳥に挨拶をしながら町のてっぺんから桜を眺めてやるんだ。







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最終更新日  2016.12.27 04:39:23
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