Laub🍃

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2011.06.03
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カテゴリ: .1次メモ
 大学生、はじめての一人暮らし。念願かなって扇風機をバイトの金で買うことに成功。

 実家に居た頃なんて大家族だからか俺の家庭内カーストが低いからか全く…首振りの時でさえ俺使わせてもらえなかったもんなあ。

 感慨深く思いながらスイッチをオン。

 ブオオオオオ・・・といい音。

 だが……うん?俺に当たってなくない?

 それとも扇風機とは強にしてもこんなに風が弱いものだったのだろうか。
 目の前の誰か越しに受けているのと同じような感覚。

「……この部屋、やっぱやばい物件だったのかなあ」

 電灯は時々ちかちかするし、帰ると何故かついていることがあるし、扇風機が勝手に回り出す上に何か挟まっているような音がするし、排水溝には長い髪がべったりしょっちゅう入ってるし。



 ぴんぽーん

「お、仕送りかな?」

 夜中だけど気にせずつっかけ履いてドアを開けると、誰も居ない。

「またボロが増えたよー!!!」

 思わずわめくと、どん、と隣から叩く音。

「おっかしーな、隣には誰も住んで…家鳴りか!!!」

 ずっ、と転ぶような音がした気がするが、気にしないことにする。天井でとたとた歩き回るような音。ここは最上階だ。

「そういえば、天井裏にもでっかいネズミが住み着いてるんだよなー、とたとたうっせえっての。」

 ぐちぐち誰も聞く人は居ないのに呟きつつ、布団を部屋に戻す。何故か部屋に入れた途端に人型に湿りだす布団にいつもの通り抱き枕カバーをつけ、キャラの名前を呼んでちゅっちゅする。どことなく湿気が引いてきた気がする。飽きてきたので寝る。

 まあ、家賃安いからいっか。











 住み始めて半年が過ぎた頃、俺に彼女が出来た。彼女も俺と同じく細かいことを気にしない人で、そして無計画だった。
 俺達には子供が出来たが、この子は俺達と違って用心深いようだった。
 この部屋が変なことに怯えてしまうだろうかと生まれる前は心配したものだったが、不思議なことにこの子が生まれてから変なことは起きなくなった。大家さんがやっと対処してくれたのだろうか。

 息子が3歳になった時、保育園でおばけやしきをやったらしく



 と脅かしてきた。とても可愛かったが、ここで笑ったり和んではこの子のプライドがむちゃくちゃだろう。

「うわ~、こわ~い」

 そういうと、息子は

「今度は無視しないんだね」

 と言った。
 何の事か分からずきょとんとしていると、

「いや、ごめん…あんたに言った俺が間違いだった」
「俺?かっこいい喋り方覚えたんだな!」

 妙に大人びた喋り方に、目を輝かせぎゅうと抱き締めると、

「……今度は、ずっと、一緒に居てよ。俺、ずっと一人で寂しかったんだから」
「え、俺一人にしてた時あった!?ごめん!!」

 今度は、背伸びした少年のような喋り方。共働きだから寂しい思いをさせてしまった時もあったのかもしれない。そう思って頬ずりをすると、

「……いた、ひげじょりじょりしていたい!」

 今度こそ、年相応のーーーいや、それ以上に幼い笑い方をした息子。
 丁度帰ってきた妻と一緒に、これからも息子を大事にしていこうと思った。




*****


「今度は突き落とさないでね」のほのぼのバージョン。
このあとめちゃくちゃファザコンした





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最終更新日  2016.09.17 22:08:10
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