Laub🍃

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2011.06.28
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カテゴリ: .1次メモ


 その乞食は王子が拾った靴を大事そうに抱えるのを見届けてから、姿を消した。心無い衛兵に叩き出されるのは億劫だ。
 そうして着いた寝藁の上、乞食は目に留められない自分の姿を、複雑そうな目で眺めた。









 愛される人にはそれなりの理由がある。
 同時に愛されない人にもそれなりの理由がある。

 そうして僕は愛されない側の人間だった。

 故に愛される人を見て愛しては、愛される理由と、俺がそんな人と逆の存在であることを認識し沈み込み
 愛されない人を愛し愛されるようにプロデュースして幸せそうにしているのを見ることが幸せだった。




 副作用で奪われるもの。それは例えばシンデレラとは全く関係の無い誰かの幸。それは全く関係ないどこかの可哀想な誰かの愛。

 そうして生み出された新たな悲劇のもとに俺は駆けつけ優しい笑顔でこう言うのだ――「助けてあげましょう」

 とんだマッチポンプ。

 だが、お蔭で俺は世界中が幸せになってお役御免、なんてことにならないでいられるのだから、これを改善する気はかけらほども起こらない。



 俺は今日も、幸せと不幸せの隙間を渡り歩く。





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最終更新日  2015.08.25 02:47:51 コメントを書く


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