Laub🍃

Laub🍃

2011.07.03
XML
カテゴリ: .1次メモ
「ふごっ」

豚か。


いや、違う。人間だった。


「三井君、市満さん起こしてくれない?」
「嫌です」
「そう言わないで」

「ねむねむ」

うるせえ。


幼馴染っていうと、その響きだけで甘い関係を連想されるが、そんな甘いもんじゃない。

別に太り切っているわけじゃない、というかむしろ筋肉が結構ついているこいつは、円は、
それに見合わず授業中寝てばかりいる。

部活ではエースらしいが、知らない。見に行く気もない。
小学生の時、弁当を届けに来たミニバスが最後の記憶のままでいい。

「…おい、起きろ」
「んー……あ、ああああああ」
「はっ!?」

起きた。と同時に何故か襟をつかまれた。

「お、おい、何だよ、や、やんのか、おおおおおら」
「何で邪魔すんの!!!」
「はぁ!!?」
「せ……せっかく……」
「せかいせいふく?」
「違うよ!!せっかく勝てた所だったのに!!!」


……ああ……

「いつも負けてるからか」
「そ、そうだけどっ……そう言わないでよぉ…………」


女子にしてはドスの聞いた声でそのままメソメソ鳴き出す、いや違った、泣き出す円。
周囲の視線が地味に痛いが、それより円が背を丸めてめそめそしていることへの罪悪感がざくざくと刺さる。
く……そんなにショックだったのか、悪い事し……いや、してねえよ。


「でもお前はやれることやってるんだろ」
「う……でも、まだ、足りない……だから色々しなきゃ……」

あの眠りこけている姿も、もしかしたら日々追い詰められた顔をしていくこいつが安らげる唯一の時間なのかもしれなくて。


けど。


「そうか。それは分かったが、二人組で作業をやることになったから今は起きてくれ」
「うぇー……」


嫌そうな顔をする円を宥めながら、作業を始める。小さなディベートみたいなもので、話ながらやるのでうとうとも出来ないと終始円は不満げだ。

「……おい、大丈夫か」
「そう思うんなら、寝かせて……」
「……あと数分だから」


妙に新鮮な気分で、そういえばこいつと普通に話すのが、久しぶりなことに気付く。

「環境問題はやっぱり重要だろ、アレだぞ、南極溶けるんだぞ、空に穴開くんだぞ、怖いだろ」
「でもさー、環境問題は多分あれだよ、私にとっては別に大した関わりないんだし、うっちゃっていいじゃーん…?私バスケのほうが好きだー……南極や空でバスケなんてしないじゃーん……」

いや、駄目だろ。

「お前さー……そこまで大事なの、バスケ。負けてばっかりじゃん」
「……別にいいじゃん、負けたって楽しい物は楽しいんだから。」

むすっとした顔で、突然しっかりした言い方になる円。

「そこまでバスケバスケ言ってるなら、バスケ強い所行けばよかったろ。お前結構力あるんだから。そうすれば卒業後も……」
「そういうすみちゃんだってさー、将棋もっと強い所行けば良かったじゃん?昔っからうちのおじーちゃんと将棋ばっかしてたんだから」
「あれは……」


男子校だから、何故か選択から外してしまった、なんて。

言えるか。


「……弱い所で皆で強くなっていくほうが燃えるだろ」
「じゃあ私もそれぇー」
「おいぱくんな」


×××××






すみちゃんには言えない。

すみちゃんのお兄ちゃんが通った高校を、すみちゃんが目指してたから、だなんて。

その理由はまだ分からないし、それをうじうじぐだぐだ考えてるくらいなら、ドリブルやシュート練に集中するけど、


いつか、分かるのかな。






















××××××××××


三井墨朋(168.3)と市満円(195.8)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2015.06.30 00:47:38
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: