Laub🍃

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2011.08.04
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
帰れない二人。

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秘密を共有することは、関係の密度を深めるんだと言う。
なら、俺たちのこの関係は元はどんな形だったのか。

色が濃くなりすぎて、もう分からない。







あいつは鍵をなくしてしまった。



絶妙な、秘密だからなというオーラを出して、寂しそうな控えめな笑顔であいつは言う。

いつなくしたのか。どうすればなくさずに済んだのかなんて考えても仮定にしか過ぎない。
ライバルの、保護対象の、共犯者のあいつを、どうすれば元のあいつに戻せるのかも。

ーだけど、元のあいつばかりを願っても今のあいつを否定することしかできない。
覆水盆に返らず、灰は元の紙に戻らない。

だから俺も一緒に邪道に行ってやろうと思った。
使命なんて御大層なものはない、一度として先生の為に頑張ろうとなんて思ったことはない。
一人、面白い先生も居たがーあの試験で打ちのめされて、大人は全て憎む対象になった。

俺が守りたいのは子供、それも一人だけの、どんなに汚れても目の奥が綺麗なままの子供。

ライバルだからお互い切磋琢磨できるあいつを、保護者だから背中を預けてくるあいつを、共犯者だから一緒に裏で動けるあいつを、知っているのが俺だけという優越感もその想いに拍車をかける。

こんな状態になっていても、ひたすら他の奴を助けるあいつにイラつく半面、凄いなと思うしかない。俺に欠けた所をあいつが全部きっと持っている。



あいつのなくした鍵も。

ーだが、俺が動こうとすればするほど何故か拗れる。

やがて悟った。あいつの鍵は、俺だけでは足りないのだと。




全てが終わってもなおあいつは我慢している。
帰る場所がないからと、二人して世間の秘密基地のようなまねごとをしている。




普段から抱えていて言いそびれてしまっていた言葉だったり、

どう接すればいいかもわからない腫物だったり、

憎悪の怨嗟に直接つながるものというわけではないのに、

あいつは、嫌われたくないからと隠しまくる。


嘘の共犯者は俺。そして、たまに話をしにくるあの二人。
ー初めは黙っていた方がいいのかと迷いもした。

だが、もう限界だ。
ある程度隠していたんだから、もういいだろう。
何人かは薄々気が付いているだろうし。

案外ダメージがそう深くなかったら、あいつはきっと驚いて、そうしてあの泣きそうな笑顔でまた笑うのか。


そうしたら。


あいつの穴が埋められたら、俺の穴もその馬鹿みたいな顔のおかげで埋められるかもしれない。





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最終更新日  2017.09.03 12:07:46
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