Laub🍃

Laub🍃

2011.08.25
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カテゴリ: .1次小
うちにある茨が突然歌うようになった。

特に夜中に歌いだすのでご近所からのクレームが凄まじい。

仕方がないので風呂桶に入れておくことにした。

「有名になりたいのなら、どうしてあんたは家でギターばっかり弾いてるの?」
「路上はこの時期冷えるんだよ。これが自由ってやつだ」
「そうやっていて結局余計に自分の首を絞めるのに」

そいつはくすくすと謳うように笑う。
ああうるさい。

しかしそいつはちょきちょき切ってもちっとも枯れやしない。


燃やしても俺が火傷するだけだった。


分かっているんだ。

俺を閉じ込めてるのは俺自身だってことは。

茨も魔女もないのに、鍵だって開けて外へ出ていけるのに、そうしないのは俺の怠慢だってことは。

ラプンツェルは幸福だ。
縛られることは幸福だ、流される方が幸福だという人間も居るのだ。

俺なんかに王子は来ない。

ならば、

「おい茨よ」
「なぁによ」
「失礼するぜ」

「ちょっとだけだよ」


 瞬間、ぞぶりと音がした。
 案外痛くはなかった。


 夢も見られない目なんて要らない。
 声援の聞こえない耳なんて要らない。






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最終更新日  2017.03.10 04:39:56
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