Laub🍃

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2011.09.01
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カテゴリ: .1次メモ
 K国の王子は、お忍びで隣国の視察に来ていた。
 そこで見たものは。

「おおおおおおおおおおおおおお」

 何やら不思議な金棒を振り回す者。

「あれは何奴だ?」
「分かりませぬが…容貌からして町のならず者か大道芸人かと」

 不思議な金棒を振り回す者は、周囲が金や食べ物を投げた時はそれを器用に片手で受け取ってみせるのだが、それ以外のものー例えば石ーを投げると、漏れなく全て弾き、設置した的に当ててみせるのだ。

「面白い。私もやってみよう」
「おやめください、目立ったら面倒です」


 残念そうな王子を引きずって、苦労人の従者は歩いていく。だが、その横顔に声を掛ける者が。

「そこのお二人さんはやってかなくていいのかい?」
「いっ、いいのか!?」

 大道芸人本人の誘いとあっては、愉しい事が大好きな王子が見逃す筈がなかった。
 こうなっては王子を従者は止めることが出来ない。額に手を当てうらめしげに大道芸人を見詰めることしか彼には出来ない。そんな二人を愉快そうに見つめる大道芸人。

「何、時間は取らせないさ――」
「……こちらこそ望むところ」

 王子はその辺に落ちていた石を拾い上げ、「あああああああああああああああああ」と腕を振り回し始めた。

「……これまでの投手とは違うようだな」

 大道芸人も期待と興奮、……そして、若干の恐怖に顔を歪め、金棒を新たに構え直した。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 王子の体、取り分け石を握る右腕が青く光り始める。
 大道芸人も、金棒を中心に赤く光り始める。


「「ラァ!!!」」
 一投目。王子の投げた光球が、金棒に触れる。だが当たりどころが悪かったのか、金棒がミシミシと音を立てる。
 慌てて大道芸人はそれを打ち返すでなく、往なすようにして、球が地面に重い音を立てて突き刺さるのを舌打ちをして眺める。


「分かった」

 王子は額に汗をかいてはいたが、まだ余裕そうだ。

「余裕…持たせっかよ!!!」

 二投目。的に当たったわけではないが、重い球を真正面から受け止めた金棒はその威力を呑み込み推力として大道芸人に伝える。球はそのまま真下に落ちたが、今度の落ちる音は先程よりも随分と軽かった。

「ふ…やるではないか」
「お褒めの言葉ありがとよ」

 三投目。王子がこれまでになく強く速く球に威力を込め――大道芸人もこれまでより数段鮮やかに金棒捌きを見せ――


「はあああああああああああああああああああ」
「ほおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

ガンッ!

 歌唄いの男の如く、高いが重みのある音を立て二つはぶつかった――

 だが、様子を見守る二人の間からそれは遠く離れる。金棒は大道芸人の手を離れて的に突き刺さり、石は空高く舞い上がって――視界の外へ。

「……あの分では、恐らく城外まで行っているでしょう。これで満足したでしょう、目的を果たしに行きますよ」
「くそ…私はあと一度くらい投げられる!!」
「奇遇だな、俺もだ」


 そう言って再び二人は「あああああああああああああああああ」「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお」と始めましたが、

「…あれっ」
「……うっ」

 スタミナ切れになってしまっていました。

「ふ…次の勝負を楽しみにしていろよ」
「ふん、次の勝負じゃ俺は金棒に着けたこの覆いを外してやったらぁ」



 そう言って笑いあった二人。
 後に戦場で、K国の王子とO国の将軍として再会することは、神のみぞ知る。




これが野球の始まりである。






っていう夢を見たよ!!





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最終更新日  2015.09.10 11:49:07
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