Laub🍃

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2011.09.07
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カテゴリ: .1次メモ
 独りぼっちの人が好きだった。
 俺しか頼る相手が居ないなら、俺は相談相手にも遊び相手にも抱き人形にもサンドバッグにも何にでもなれた。

 泣いているのを慰めた時、昔の独りぼっちの自分を慰めている気持ちに頻繁になった。まるで自慰。
 一緒に笑っている時世界は華やいだ。
 求められている時心臓が疼いた。

 たまに、たまに必要としてくれる人が、独りぼっちで不安そうにしている人が、欠けている人が全く居ない空間に行くと自分が不安になってしまう。
 まるで宇宙にたった一人で放り出された様な。
 友情の親しさの飽和。奉仕役はこれ以上要らない。

 けれど俺は求めるほうにはなれない。もう子供ではないのだから、そう思うと誰かの空いた手を求めてしまう。







「三波って、よく分かんないよね」
「え、そうか?」

 男勝りな女友達が急に言い出すのを、いつもの半笑いで聞く。
「そうそう、いつも笑ってるしさ」
「何したら怒るの?」
「怒った顔見たいのか?」

 逆に問うと、見たいと騒がれる。……自分で言っておいて難だが、絶対に嫌だ。

「……俺は怒ったら声がちょっと低くなるくらいだよ」

 本当に怒ったら、無視に近い対応をしてしまいそうだが…まあ、疲れた時もこうなってしまうし、その時に誤解させたら嫌だからこれは黙っておこう。

「つまんなーい」

「怒った方がいいのかよ…」

 ふざけて怒ったようなしぐさをすることはあるけれど、怒らないでへらへらしているのはもはや俺のスタンスと化しているし、俺自身がそもそも後ろめたい事や痛い過去が多いので人に怒る前にまず相手を慰めてしまうのだ。まあこれって結局自慰みたいなものなんだけどな!

 好きな子が怒るのが好きでちょっかいを出す小学生男子みたいな目の前の友人(今日も怒らせていた)みたいに、特定のリアクションが欲しいから、「ある程度満たされていても」話し掛ける触れる場合があるんだろうし。

「安心しろよ、怒ったらされたことと同じことやり返してやるから」
「……本当にやりそうでこわいんだけど」


 どうしろと。





 孤独と親近の瀬戸際は、斧が振り子のようになっている昔見た映画みたいに、頻繁に俺に訪れる。
 きっと孤独に慣れてしまえば、幽霊のような存在で居れば、昔みたいに楽なんだ。

 でも、今俺の包まれている熱にじわりと涙が出てくるからには、この余韻が俺の自虐ループを和らげてくれるからには、まだ刃が当たらぬように走ることが俺にとっての幸福なんだろう。





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最終更新日  2015.09.07 01:27:00
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