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長押綴

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2011.11.06

静かに狙え。
　大人になるんだ。喩え大きな負担があろうとも。何かを捨てるとしても。
　純粋に心身を鍛え上げろ。助ける為に導く為に要らないものは置いてゆけ。
　まっすぐに歩き続けろ。
　人一倍ハードに鍛錬をしろ。たゆまぬ努力さえしていれば間違っていないんだ。生きる為に生きさせるために絶対に必要なことなのだ。
　賢く、気を抜かず、気を効かせて、友達を助けて、自分も落ちないように頑張って。
　喩え世界がどうなろうとも、自分達だけは守り抜けるようにあらゆるものを捨てて。

　頑張って頑張って頑張って頑張って鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて削ぎ落として削ぎ落として削ぎ落として削ぎ落として、隠すんだ。

　隠してきたんだ。

　なのに全部裏目に出た。

　無駄だなんて思いたくなかった。自分の中で生きている皆を活かせば、まだあいつらが生きているような気がしたんだ。

　そうしないと、死んでしまうから。

　けれど、そうでなくても生き抜けるのなら。
　オレ達のしてきたことってなんだったんだろう。

　オレ達って、何だったんだろう。

『全部好きなようにやっていいんだよ』

　でもそうしたら死んでしまうじゃないか。

　常に誘導されていた。列をそれると鞭打たれ、それ以上それると閉じ込められ、働けなくなると…役立たずになると殺されたのに。

　事情が事情だから仕方ないと思っていたのに。

　国の、人類の存亡の危機だから。

　隠されていないといけないことだから。

『好きなように出来る』なんて、気付かない方が幸せだったのに。

　感覚が汚染されていくことはむしろ幸せだった。noと言えない環境、出口ゼロならば前へ進むしかないのだから。
　強くなった。壊れないように。泣かないように。ばれないように。

　弱みは見せないように隠さなくちゃいけない。頼られないと。
　要らないものは置いていかなくちゃ。
　あいつらを置いていかないといけない。
　あいつらへの未練さえも置いていかないといけない。
　ああ、でもそれは『自分で決めていい』のかな。

　だったら、この執着は、この憎しみは、『持っていていい』のかな。
　なくなったものは、役立たずだから。弱かったから。死んでも仕方のないものだったんだ。
　良心と呼ぶものはオレたちには必要なかったんだ。
　ただ生きる為に生きる事が、生きる為に生きさせることが、使命なのだから。

　無駄だったり無駄じゃなかったりするものだ、命なんて。
　だからこそそれを避ける為に守らねばならないんだ。闘わないといけないんだ。

　ここに残ったオレは、その力を持っている。
　だから、間違ってないはずだ。死ぬべきではないはずなんだ。

　オレ達の存在こそがここでの規律のはずだ。
　だって弱味は隠してる。強い所だけ、従うべきだと思われる所だけ見せている筈なのに。

　リーダーとはなんだろう。

　きっと、偶像だ。あるべきものだ。導き、追われるものだ。
　英雄でなくても、泥に塗れても、血を流しても、守るべきものを守り切るものだ。

　領地を守り、そこに住む者の盾となり、道理に合わないものを正し、弱いものを助け、
仲間と共にあり、誰かを愛する。

　そのために闘い続けるものなのだ。

　あの人はよく曲を流した。その中に、守る為に闘う歌もあった。
　粗野でも暴虐でも横暴でも守れればいい。愛するものを大事にすればいい。
　そうすれば世界を救うことになっている筈だ。
　霞を食っては生きてはいけない。だから何かしらを殺さねば生きてはいけない。だから人を殺してもそれは仕方のない事なのだ。オレ達だけが生き延びて世界を救えればそれでいいんだ。

　あの人たちが過去の世界から送り出すタイムカプセルがオレ達だ。
　あの人が、あの故郷で伝承させようとした存在が、オレ達なんだ。

　オレの身体の中には死んだ彼女が血肉となって居る。
　オレの後ろでは死んだあいつがまだ追いかけている。

　だから、生き続けるしかない。
　死なない為に。あいつらの死を無駄にしないために。
　生きる理由なんて、目的なんて、それで十分だ。
　ずっと背負って歩き続けなくちゃいけないんだ。

　静かに歩き続ける。
　どこか秘密の隠れ家で安らげるなんて幻想、もう抱いてはいない。

　オレ達はヒーローじゃないから、探し続けなくちゃいけない。
　英雄なんかじゃないから、世間の常識なんて知った事ではない。
　だけどリーダーだ。
　オレ達は何を犠牲にしても合理的に動く為に生み出された存在なのだから、従ってもらわないと困るんだ。
　全員死んでしまう。
　だから今だけはみんなに要らないものを殺していかないといけないんだ。

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