Laub🍃

Laub🍃

2011.11.07
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
蒔かれた種を育てるのは、草を茂らせるのは、熱い血だ。

「未来に行かないと駄目だ茂」
「確かに僕は未来に行きたいと言ったよ。安居と一緒に」
「未来でお前は生きろ」
「だけど行ってやることがないんだ」
「俺はもう駄目だ」
「安居が駄目なら僕なんてもっと駄目だ」
「俺の代わりに」
「安居はどうしていたっけ」



何度も何度も反芻する。
子供の頃からずっと一緒でずっと見て教えてもらってたから。
だけど分からないんだ、15歳からの安居が全然分からないんだ。
追いつくために必死に図書室で勉強してた、安居は安居で源五郎や涼たちと勉強会に行っていた。
それに、安居が懲罰房に入れられた時から、安居は変わってしまった。

僕はその時一緒に居られなかった。

それなのに、守れなかった僕が最後に安居を守る筈だったのに、僕の方が結局受かってしまった。安居はずっと僕を守る側で、守り逃げだ。

「僕じゃなくて安居が来るべきだったんだ」

『茂、頑張れ』

「あいつらだってきっとそう思ってる」

『そのまま行け』



『寝ろ。そして一人で起きろ』

 残像の安居はいつも真っ直ぐ前を見つめている。
 その先は引っ張っていかれる相手である僕だったり、僕が見るべき明日だったりする。

 それは眩しすぎて、僕は目が潰れてしまいそうだ。

『落ちたら死ぬんだ』


「一緒に逝きたかったよ」

 空を見上げると、過去の世界にはなかった満点の星空。
 僕は船の実習の時、船酔いでぐらぐらになった床しか見えなかったけど、安居は小瑠璃に何か話していた。あの時ついていっていれば何か違ったのかな。

『お前はダメなんかじゃないぞ』

「嘘吐き」

 でも、僕が頑張れば、僕が誰かを導けば、僕が正しい方向に……安居が進むはずだった方向に進んだのなら。

 安居の言う事は全部正しかったことになるんだろう。

 安居。

 安居が強くなろうとするたびに、僕はいつか隣に立てたらと思ってた。
 支えられるくらいに強くなろうと思っていた。
 水の底で茂り待つ藻として、魚が帰って来るのを待っていた。
 安居の居場所を守っていた。安居が帰って来られるように。
 だけどそれだけじゃ足りなかったんだよね。

 僕は弱い。未だに弱者だけれど、安居はいつも僕に勇気を与えてくれようとしていたから。
 安居は喩え先生に失望しても『外』に絶望しても、どんなにあの故郷の中でちっぽけでも、輝き続ける星だったから。

 希望だったから。

 僕が憧れたその姿は希望の形をしていたから。

 だから、追いかけるよ。

 安居は、前へ泳いでいった。……僕に活路を切り拓いて。
 安居が泳いでいるなら、ドブ川でも清流と同じで真っ直ぐに道が見えていた。
 安居は居なくなったんじゃない。僕に道を見せて、そのずっとずっと先で待っているんだ。





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最終更新日  2017.03.15 00:12:43
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