Laub🍃

Laub🍃

2011.11.14
XML
カテゴリ: .1次メモ
「ほらぁ、委員長泣いちゃったじゃない。どうしてくれんのよ男子ー」
「うっせえ!元はと言えばお前らが…」
「あ、あの、いいの。いいの、義香ちゃん。私が悪いから」
「あんたは悪くないって!こいつが全然言う事聞かず暴走すんのが悪いのよ」
「はぁ?あんまり押し込められたら暴走すんの当たり前だろ、だから自分たちで適当に発散してたっつーのにそこに勝手に入ってきてあろうことか没収騒ぎとかお前らの方が頭おかしいだろ」
「何ですって」
「だ、大丈夫だから、もう必要な時以外関わらないようにしようよ、ね?」


 あー、むっかつく。

 委員長はつまんねえ人に気ばっか使う生き方してっし、義賊気取りのお節介は声だけうっせえし。


「もごもごもご」
「あ、悪い」

 べりっとそいつに着いてるものを剥がす。

「ぷっは!何でいっつもいっつもオレ黙らされんの!?析也、ちょっとくらい話させてくれよぉ」
「暴走すっからだよ。お前があいつらと話すといつも以上にこじれんだから」
「ただ単に煽るの楽しいだけだよ!あいつらが怒ってるのも面白いと思えば話し合い楽しくね?」
「いや、それもう破滅に向かうだけだし」

 冷静な奴は他にも居るが、他のは他人の感情無視して効率ばっかり優先するから、女子共も話しづらいとか言いやがって結局俺が調停役にされるのだ。


「さてどうするよ、この状況」
「取り敢えずオレ偵察に行ってこようか?外にさ」
「……なんかお前の場合猛獣に追っかけられて帰ってきそうで怖いんだよなぁ」


 ぷんすこぷん!とか口で言ってやがるやつを無視して、頭を抱える。


 どうしよう。本当にどうしよう。



 俺達、濃乃中学2年生は、修学旅行に来ていた。
 けれど気が付いたらこんな……異世界のような所にやって来てしまっている。
 修学旅行の旅館ごと。


「そう言って馬鹿やらかすお前の尻拭いしてんの誰だと思ってんだよ」

 低い声で脅すように言うが、馬鹿は『キャッ』とか言いやがって全く堪えてねえ。くそ、殴りたい。

「……」
 ふー、と息を吐くと、それもまた「楽に行こうぜ」とか諭される。うるせえ。誰のせいだと思ってんだ。

「……仕方ない、お前みたいに命知らずな馬鹿は止めても止まんねえだろ」
「分かってらっしゃる」
「行って来い。ただし、やばいと思ったらすぐ帰って来いよ」
「りょーかーい!」

 いつの間にか、玄関。

 朝の光だか、月の光だか分からないけれど、真っ赤な光に照らされる暗い森。

「じゃあ、行ってきまーす」
「……そっちも、気を付けてなー」
「俺等の事はそんな気にしなくていいから」

 そんなことを言ってその中に溶けていく、馬鹿含め何人かの背中。

 ああ、くそ。
 不安で仕方ない。心臓が壊れそうだ。


 ……仕方、ない、が、取り敢えずこの件に対しても激怒しそうな女子約一名に対しての弁解は用意しておいてやるか。

 そう思う事で、自分を、不吉な予感を、落ち着かせた。
 そうしないと、あの笑顔が最後になってしまいそうな予感を、忘れられなかった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2015.10.30 12:55:15
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: