Laub🍃

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2011.12.07
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カテゴリ: .1次メモ
「ははははは!愚かな、我の配下がとっくにあの村など滅ぼしておるわ!!!」
「……はぁ!?」

 魔王の捨て台詞が、これだった。
 最悪だ。

「おい、お前……お前……!?」
 目の前の体を揺さぶるけれど、からからにどす黒く収束した体はぴくりとも動かない。

「駄目だ、……死んでる」

 だけど気が狂いそうなほど後悔するかと思った勇者は、俺が思ってたより、いや俺なんかよりずっと冷静だった。

「お…お前、冷静……だな?」


 魔王との戦いで巻き添え喰らってやけどした俺に向ける目は、あんなに燃えていたのに。
 静かな瞳のまま、勇者は問いかける。

「……それより、さ。守は、これをクリアしたら、魔王を倒したら、元の世界に戻れるんだよね?」

 俺と目を合わせない勇者。出会った時よりもずっと大人びて、自信をつけて、本物の勇者となった、勇者。その様子にどぎまぎしながらも口を開く。

「多分……な。それか世界の平和を見届けてから、かのどっちかだろうな」
 確か魔王を倒したら、その後エンディングになる筈だ。そこで途中の村で出てきた子が花嫁になってたり、故郷に一緒に戻って墓参りをしたり、子供が出来て、その子が次の勇者みたいな服を着て、剣を振りかざして終わり……の、はずだ。
「それってもしかして、あの魔方陣の上に立つとかじゃないの?」
 ピンク色の目が、魔法のように青く染まる。その目線の先にはその光源。
「!そうだ、あれだ!!」
「……なんか、瞬きだしたね。早く行かないとまずいんじゃない」
「そうだな、行く!今までありがとう」


 ずっとこの世界で勇者の相棒として、世界を救ったもう一人として暮らすのも悪くないんじゃないかと。だけど従兄はちょっと悲しむかなと思った。誰にも必要とされてない俺だけど、あいつの手伝いやって、今度はもうちょっと救われるゲーム作れよって言うぐらいはやらないと、と。

「……やっぱり、そっか」
「え?」

 次の瞬間、俺の行く手を見慣れたピンクの髪が阻んだ。

「ごめんね」







 次の瞬間、『ああああ』は消えていた。
 青く光る魔方陣とともに。

 取り残された俺は、一人。
「……そういや、あいつの名前…変えそびれてたな……はは」

 脱力して指の形をした蝋燭の中で座り込む。

「こういう時に行くな『ああああ』!!!って……すっげえまぬけ」

 こんなんだからあいつに捨てられたのかなーなんて、魔王に近侍の死体、犠牲者のしゃれこうべの中で笑い続けていた。





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最終更新日  2016.11.19 23:32:37
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