Laub🍃

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2011.12.07
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カテゴリ: 💫復活裏




殺してしまうなんて思わなかった。



山本が初めて人を殺したのは、守護者の中で一番遅い、
22歳の頃だった。


周囲は恐らく、それが初めてだとは思っていないだろう。

山本武という人間の戦闘時の殺気、目つきは
人を殺す者のそれによく似ているから。




俺は、彼に、日常の中でヒーローで居てとはもはや言わなかったけれど、
いつかこんな日が来るんじゃないかとは思っていたけれど、
「そのこと」を知った時、少し考えが止まってしまった。




「10年もたなかった」
と俺は思った。

違う世界の彼ならあるいは出会ってから10年経っても人を殺さず、
そもそもマフィアになんてなっていないのかもしれないけれど、
どこかの世界の「10年前の彼ら」が「10年前の山本」にバズーカを当てたら
今の彼が呼び出されたとしたら、「10年前の彼ら」が会うのは
人を殺したことのある山本、なのだ。



内面。


かつて青空のように爽やかだと称されたそれは、
今はもう硝煙と血に塗れている。


内面の変化を彼には、彼だけには悟られたくなくて。




けれど、やっと彼と「同じ」になれたことを喜ぶ自身もどこかに居て。



あの日の青空のようにどこへでもいける可能性なんてもうなくなってしまった。



それでも硝煙と血に満たされたそれは、もうただの青空のようには空っぽじゃない。



地べたの泥に囚われてもう飛べはしないのにそれでも蠢く鳥のように
今日も山本は哀しみと、そして歪んだ笑みをもって仕事へ出掛けるのだ。






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最終更新日  2014.07.12 17:21:36 コメントを書く
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