Laub🍃

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2012.05.24
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カテゴリ: .1次メモ
 男はよく首を傾げた。

 彼自身はそのような無駄な動作などするつもりはないのだが、どうしても気を抜くと傾いてしまうのだ。

 彼はかつて、戦争用ロボットだった。





 不毛な戦争が終わった後、残っているのは大量のゲリラの死体に壊れたロボットたち、その中でもまだましなほうとして彼は居た。
 仮にも人工知能を貰った、少々上等なロボットだった彼は、幸運にも殉死した戦友たちの腕、脚を貰い蘇った。
 その働き先としては、戦地の復興・ゲリラ達の潜んでいた村の再開発などといった、力仕事ないしは危険の多い仕事。

 それでも彼に苦などはなかった。人と深く関わるまでは。

 *

「1364P984号、明日からお前の仕事が変更される」


 何だろう。
 感情が乏しく、即物的なことしか考えられない彼の頭に純粋な疑問と好奇心が浮かんだ。
 しかし、唐突だな。この上司はいつも連絡が遅いが、今回は格別だ。

「この女の面倒を見ろ」

 そう言われ、見せられたのは檻の中、座り込む女。ゲリラだろうか。いや、しかし彼女はどこかぎこちない笑みを浮かべている。スパイと疑われた同じ軍のメンバーだろうか?

「主に食事、風呂や睡眠時の見張り、バイタルの検査をやれ」
「この人の立場は…」
「知る必要はない」
「女性ロボットがついた方がいいのでは」
「今はロボットの数があまり多くない。一番成績の悪いお前が担当になるのが順当だろう」
「分かりました」


 能面のように笑い続ける彼女に一度ぺこりと頭を下げてから、上司の後を追った。





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最終更新日  2016.04.06 16:40:11
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