Laub🍃

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2012.08.15
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カテゴリ: .1次メモ
 祭りの日が来た。ついに、来てしまった。

 何故か頻繁に顔を出すヒノエは、祭りの準備で出されたまかないめしをばくばくと食べている。毒舌を吐きながらも瞬く間に馴染んでいるヒノエを改めて凄いと思う。真似できるともしたいとも思わないが。

「……」

 一方、俺の手の中にあるのは小さな置物。売り物にするのであれば、もう少し。
 一緒に働いているおばちゃんの豪快な作業を思い出す。男の癖にちまちまとするなと言われるかもしれないが、それでもどうしても塗り残しなどが気になってしまうのだ。

 最後の仕上げ作業をしていると、何故か奴らがこっちにやって来た。

「……何」
「これ頼むわー」
「は?」





「……何、すてろってこと」
「は?当たり前じゃん、他に何ができるっていうのお前に」

 何言ってるんだこいつ。
 俺が好きな作業してる時にこういういらつくことを言ってくるのは今の所こいつが一番だ。

 思い出したくもない、こいつと何故か一緒に働くことになった時の事を思い出して二重にイラつく。

 そんな俺の様子など気にもかけずにヒノエは続ける。いつものゴーイングマイウェイ。
 こいつのそういうところが大好きなんだろうな、子分どもは。

「俺ゴミ箱の場所しらないし、他にやることあるし。細かい事好きだろお前」
「適材適所ってやつですね」
「……」

 お前の後始末もお守役もごめんなんだが。


「……」

 はあ、と一つ大げさでない程度に溜息をついて、何も返事をしないまま持たされたものを持って、歩きながら作業を続ける。

「ユクエ、それ危なくない?」
「こっちのほうが効率的だろ」

 心配してくれた眼鏡の娘は同僚だ。ああ、俺は今この天国で働いているんだ。あいつの居た地獄じゃあないんだ。



 ヒノエがまた何か喚いている。

「何だよ、なんかあんなら言えよ」


 何もないよ。お前に言う事なんて。お前に言っても何も意味がないだろう。

 お前が悪いわけじゃない。だけど、俺とお前の相性が決定的に悪い。

 傷つけあうのが好きなわけでもsでもmでもないから、お前と接していたら確実に俺は周囲に毒をまき散らし、そしてみっともない姿も見せるから。

 忘れよう。目の前の本当にやらなきゃいけないやりたい相性のいいことだけと接するようにしよう。

 だから、あれは。

「どうでもいい」


 置き去りにしてもいい声だ。





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最終更新日  2015.07.24 01:43:59
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