Laub🍃

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2012.09.07
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カテゴリ: .1次メモ
「……」
 毎日が嫌で嫌で堪らない。私よりも遥かに双子のあいつのほうが出来るのだ。
 呼ばれるのはあいつの名前ばかり、私がたまに選ばれたと思ったら大抵はあいつと間違えたとかあいつとの仲を深めるためとかそういう、そういうこと。その残酷さを自覚しているのかいないのか、ただ唯一で居られる他人はみんな押し付けてくる。私は私なのに、あいつの代わりではないのに。

 この想いを打ち明けたことはない。誰かに打ち明けられるほど、私は誰にも愛されてはいないのだ。
 …けれど、彼女…寺院長は私の必死の取り繕いを破って、面と向かって強い目でこう言ったのだ。

「そこまでその立ち位置が、呼び名が嫌なら、自分で新しい技を、新しい戦果を勝ち取りなさい」

 かくして私は勇者一行に立ちはだかることになった。






「食らえ勇者どもめ!最近覚えた魔法っっ!!!」


「わっ、またお前か!!!」
「今度は何だ?また異様にモスキート族に好かれる魔法か?」
「地味に嫌なのよね…」
 前回も前々回も地味な嫌がらせの能力。うんざりした顔にこちらの胃もきりきりと痛み出す。
「違う!今度は……きっと貴様らを屠る魔法だ!!」
「だから、あなたの魔力限界的に無理よ」
 どこかで見たような気のする女性が言い放つが、気にせず魔法を放つ。
「なんでそんなに落ち着いているんだアニエス…って、わっ!!?」
「ウボァ」
「アニエース!!!」
 なん……だと……?

 目の前には、私の魔法によって全裸になった青年の姿があった。そういえば戯れに、王子がパーティに加わっているのだっけ。まあ、止められないということは、彼を尊重する必要はないということなのだろう。
「貴様にもかけてやる!!」
「うわあああああ!!!見るなクソ王子!!」
 相当痛い音がした。
「いやあああああ!!!」

「……っナグモ、早く帰 って来い!対低級魔法結界張ってくれ…!!」


 おかしい。こんな筈ではなかった。もっと、こう、なんというか重厚な雰囲気の漂う……難敵だが力の出しがいがあると思われるような…………そんな立ちはだかり方をしたかったのだが……

 一通りかけ終わって阿鼻叫喚の姿は、……とても勇者一行に見えず、またそんな姿にしてやったことへの達成感も特に湧き上がらず。

「……ふん、今日はこのくらいにしておいてやる」

 パ=ルプンテ。私の能力の唯一の利点は、かけても私の意志さえあればすぐに解くことができることだ。
 瞬く間に勇者一行の服が現れる。私が倒したいのは、こういう勇者たちだ。せっかく勇者たちを倒しても、私の称号が「脱がし魔」では悔やむに悔やみきれない。

「二度と来るな……」
「ふっ、また会おう」

 目から口から血を流すどこかで見た女性の声を背に私は逃げ出した。





 この馬鹿な出来事の数日後手に入れた能力は、私の称号を「悪夢」にしてくれるものだった。




***


終始名前が出なかった東の魔王(というか東の大寺院勢力)の刺客、コグレ。

双子の妹コガレに対し根強いコンプレックスを抱いている。

パ=ルプンテが使えるが、今のところ低級嫌がらせにしか使えない。







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最終更新日  2016.06.21 19:41:47
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