Laub🍃

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2012.10.13
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カテゴリ: 💫復活裏


「……え?」

 家族しか話す相手の居なかった、あの頃。

「親戚のおじいさまのお友達のリボーンくんよ。ツッくんが命を狙われているそうだから、守ってくれるって」

 作り話のような展開だったのに、普段はふわふわしている母さんの顔が物凄く強張っていて。

「え、い、いのち?」
「つーことで、お前を狙われても大丈夫な人間にするまでは、俺が守ってやる」
「え?え???」

 そんな荒唐無稽な話を受け入れた当時の母さんと俺すごい。


……問題は、彼が出会った頃から、一切成長しないことでも、
俺に対して「教えて」くれるのが、勉強や体育だけでなくーーー……

「避けてみろ、駄目ツナ」
「どええええええええっ!!!」

 どう見てもおかしい特訓まで入っていることだった。



**リボツナがもし幼馴染だったら**


「…ふん、避けたな。やるようになったじゃねーかダメツナめ」
「そりゃ、突然足がバネになったり、唐突に死ぬ気でどっかに走りだしたり、小言色々浮かんで来たりするのが嫌だしうまくもなるよ……
 ていうか、この年まで全然狙われないのに、本当に俺ヤクザの十代目なの?狙われてないんだしここまで頑張る必要なくない?」

 そりゃ確かに、リボーンのお蔭で運動神経も勉強も出来るようになったとは思う。
 リボーンが居なかったら、のんびりできた分、頑張ることもなかったかもしれない。


 なのにお前は毎度毎度自滅しやがって」
「うっ……」

 生来の駄目っ子気質のせいか、良い所でスっ転んでしまったり、解答欄を一つずらしてしまったり、女の子に対してはまるっきり接し方が分からなかったり、……ちゃんと、友達だと思いあえる相手が居なかったりする、俺のあだ名はやっぱり「駄目ツナ」だった。

「いつまでも俺が居ると思うなよ」

 これは、リボーンの口癖。

 本気で疲れているのに鬼のような修行を課せられた時はこのままどこへでも行っちゃえばいいじゃん、といいかけたけど、そう言うと鬼のような幼馴染は修行場所に俺を置いてけぼりにして「じゃあ俺はこのままどっかへ行く。お前は自力で帰ってこい」とか言いやがるのだ、そしてそれが樹海とか滝とか山頂付近だったりしやがるのだ。
 だけどそんな幼馴染の存在は、もはや「居ないのがおかしい」くらいに思えていた。

 ……そして、

「だから、信頼できる部下を見つけろ」

 このリボーンの言葉もおんなじようにおかしなものだった。
 リボーンが居るから大丈夫だって、つーか俺には部下とか無理だしと軽口でも叩くくらいに。

 俺はリボーンの目がその時光るのを見逃さなかった。
 あーまたこいつ妙なこと企んでやがるな、と。

 ……さすがにダイナマイトで勝負を挑んできた相手が、スライディング右腕立候補してくるとは予想できなかったけど。彼がきっと、リボーンの次にできた友達。
 勉強も運動もできるのに、肝心なところが抜けている彼に突っ込みやフォローをしないと使命感を抱く俺を、リボーンは後ろでニヤニヤしながら見ていた。

 その後、親友も出来た。同年代で、何の気負いもないようにして接してくれる彼が嬉しかった。リボーンや獄寺くんでは、どうしても忘れられないマフィアという言葉を、山本と接している時だけは忘れられた。その距離感がくすぐったくもあり、楽しくもあった。リボーンとしては引き入れる気満々だったみたいけど……。

 そして大ニュース、好きな女の子…京子ちゃんと、普通に話せるようになったのだ。
 相当無理矢理な手段だったけど、急に人生に花が咲いたようで、血と汗と涙ばかりの俺の人生、この子を守れるようになれたらいいと思ったことが、急に現実味を帯びてきた。
 ……それと同時に、怖くなった。優しいけれど、闘いになんて全く慣れていないこの子を巻き込んでしまわないかと。
 彼女の兄は強かったけれど、それでも守りきれないことがあるんじゃないか。

 そう戸惑う俺を、そんなの気にしねえで遊びに誘え、とむちゃくちゃ言ってきたのもリボーンだった。

 家に更に居候も増えた。ランボ、イーピン、フゥ太、ビアンキ……戦闘の場数は踏んできたのに、どこか放っておけない弟妹のような存在。
 リボーンはずっと一線を引いていたし、たまにボケはしても常に大人だったから、一緒に子供のように遊んだり、面倒を見たりすることはとても新鮮だった。

 俺が守りたいもの、手助けしたいもの、何かから庇いたいものに、
リボーンは入っていなかった。

 その肩に背負っている何かを一緒に背負いたくても、月をいつもの何を考えているか分からない笑顔で眺めているその後ろ姿がさびしそうに見えても、何も出来なかった。
 あいつはいつも一人で自立していて、その隣で俺が出来る事と言えば、精一杯に背伸びすることくらいだった。

 だからいつかこいつが平和ボケした頃に何かに狙われたらサッと庇ってドヤ顔をしたり、月を肴に一人で呑むリボーンの隣にいつのまにか座ってて酒を呑んでやろう、なんて、思っていた。



 だけど、その時は訪れなかった。



 その数年後、俺はリボーンを追って棺に入ることになる。
 右腕である部下も、大事な親友も、敵に回すと怖い先輩も、ライバルも、応援してくれる女の子も居るこの世界を守りたかったから。

 ……お前が居なくなった世界が、怖すぎたから。

 叱ってくれるのも、それでも教え導いてくれるのも、馬鹿にしながらもいつも隣に居て助けてくれるのも、お前だった。


 リボーンが居なくなったら、俺はこれまでの俺では居られなくなってしまう。

 そうしたらきっと、ろくに誰も守れないんだ。





 だから、お前が居た頃の俺に、すべて託すんだ。


**************





リボツナ誕生日おめでとう





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最終更新日  2016.10.15 21:31:09 コメントを書く
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