Laub🍃

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2012.10.14
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カテゴリ: 💫復活裏
 どちらかが消えるという話だった。





 俺達は、一人の体で生まれてきた。
 ピンチの度に、薬を飲むたびに生まれる「俺」を、自分自身だと思っていた。
 だって、俺が体を動かしているという意識があったから。

 「俺」から話しかけられる前までは。

「このまま「俺」ばかり出ていたら、いつかお前は自分の意思では体を動かせなくなる」

 その時に俺は喜んでしまったのだ。
 だってそっちのほうが、皆を守れる。舐められて余計な戦闘を仕掛けられることもきっとなくなる。


「別にいいよ。……君が、頑張ってよ。俺にはきっと向いてないんだ、ボスなんて」

 無責任だと笑ってくれて構わない。
 けれど俺は先週も出た死者多数の報告に、未だに打ちのめされていた。

 ……超モードになった時の、あの万能感。強さ、カリスマ性、何を任せてもいいと思うあの視線。
 俺はそれが誇りで、そして、コンプレックスだった。

 けれど、今回の件で納得したと同時に少し楽にもなった。
 だってあれは俺のオンモードじゃなくて、別人だったんだから。

「……いいわけ、ないだろ」
「…なんで?」
「俺の方が、向いてない。強いだけなら俺以外にも沢山居る。……この世界で、受け入れられてきたのは、強くあろうと思ってきたのは、お前だろう。それが無駄になるんだぞ」

 絞り出すように言う声。伏し目がちの燃える目は、矢張り俺と同じだけれど、涙を零してもそのきれいささえ俺とは違うようで。


「…なあ、賭けをしないか」
「え?」
「これから数日、俺が体のコントロールをずっと握る。そこで、元に戻ってと言われなかったらお前の勝ち、言われたら俺の勝ち」
「…ああ」

 こうして、俺と「俺」の戦いが始まった。





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最終更新日  2016.06.01 23:13:55
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