Laub🍃

Laub🍃

2012.11.08
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カテゴリ: .1次メモ
死にたいと言う度に彼女の顔は歪む。
 私はそれを知っていてなお死にたいと言う。
 何故なら私が唯一知っている彼女の本当の表情を知る手段がそれだから。

 どういうわけか彼女は死に酷く恐れを抱いている。
 死を甘いもの、どこか友達染みたものとして憧れる私とは異なるのだろう。
 身動きが取れない私には、死ぬ事の出来ない私には、彼女が風呂に入れてくれる時に見えるリストカットの跡がひどく魅力的に見えた。
 それまでずっと機械のように淡々と仕事をこなしていたくせに、それを恥ずかしがって隠す彼女に昏い嫉妬を覚えた。けれどその時も私は笑って見せた。

「羨ましい」

 と笑ってみせた。そうしたら、彼女はひどく強張った顔をして、「そんなことを言わないで下さい」と言った。



 私の部屋にやってくる彼女の腕には毎日のように傷跡が増えていく。学校に行く気合を入れる作業なのだそうだ。私にしか言ったことがないのだそうだ。

「行きたくない、なんて言えませんから」

 笑ってしまう。弱いものにしか弱い所を晒せないのだ。贅沢だ。傲慢だ。ふざけるな。

 人を死なせたくないのなら、生きたいと一度でも言ってみろ。



「その剃刀を私に」
「駄目です。ショックで死んでしまうかもしれません」

 けれど、最近の彼女はどこかおかしい。死ねない私をどこか嘲笑うようにそれを見せつけてくるのだ。ああ、失敗した。こんなことならば、最初から妙なことなどしていなければよかった。

「ところで、どうですひとつ」
「何が?」
「私にこれをやめさせるだけの、生かすだけの、イカス昔話でもしていただけませんか?」


 くだらなくて、つい笑ってしまった。ああ、失敗だ。
 目の前のお馬鹿さんは気持ち悪い笑顔を浮かべている。作り笑い、ばればれだ。

「あなたが生きていて楽しいと思っていた時の話をしてください。
 私を、そんなあなたの人形にして下さい。どうとでも扱って下さい。
 どこにでも連れて行きます。なんでもします。貴方が操って下さい。

 ……私は、私としては、もう駄目なんです。
 あなたになりたいんです。……あなたが、それでも死にたいと言うのならば、それでもかまいません……」

 ……馬鹿みたいだけれど、こいつを私の言葉で生かすことができたら、私のかけらは外の世界で生きられるのだろうな。…それなら、それで、いいか。

「……それなら…」

 存分に生き地獄を、一緒に生き抜こうか。




She need to be tied up so that she may know.

あとがき


死にたいって言う人は、どうすれば止められるんだろうなと思って書いた昔の駄作リサイクル。

主人公とりすかちゃんの関係はなんでもいいです。

主人公:拷問されてズタボロになった兵士
世話役:↑を趣味で拾ったいじめられっ子お嬢様

でもいいし、

主人公:りすかちゃんを庇って怪我をした
世話役:主人公に庇われて、その責任を問われていじめられるようになった

でも。





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最終更新日  2017.02.20 02:23:00
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