Laub🍃

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2014.05.15
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
彼にとってその少年はライバルであり憧れだった。
幼い頃二人は子犬のように、その人に「教えて教えて」とまとわりついていた。
白い犬と黒い犬。

自我の確立しない時期。

やがて黒い彼は、その人の言うまま自由奔放にふるまうようになった。

自由奔放に振舞うと色々なものが見えるようになった。

かくして彼は犬の外ー人としての目線を手に入れた。

そんな彼は白い犬をからかう楽しみを知った。

白い犬は無邪気にむきになった。


けれど、少年は青年になっても狼の長のように、まっすぐな目をして群れを率いていた。
自分以外を助けたがる弱みを持つ青年に彼はあこがれた。
自分だけでは生きていけない弱さを持つ青年を彼は放っておけなかった。

その想いは、青年が一番の相棒を失ってからことに加速した。

青年が日増しに心を削られ、人から獣になっていく様子を、代わりに憎い奴らの人の皮を傷跡に巻いていく様子を、見ていることしかできない自身を彼は呪った。
呪う分だけ、その黒い手は青年を傷つける相手への凶器に変わった。

けれど、彼らは上に立ちながらもすべてを支配出来るほどの力はなく、……支配しようと思わなかった相手からの弾劾にも弱かった。

白い犬が嫌いな男の娘に嚙みついて、彼女を黒い犬が谷底に落としてから数日。
二匹の獣は追われるようにして群れを出た。

もしあいつが居たらどうしていただろうと黒い犬は一人ごちる。
噛みつくのを止めていたか、それとも白い犬を置いていったか。






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最終更新日  2017.05.11 18:36:12
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