Laub🍃

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2017.03.27
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カテゴリ: ●読
何故世の中は男と女に大別されるのだろう。
何故それ以外を受け容れがたいのだろう。




男を憎み息子に女の恰好を強いる女と、
女の恰好を受け容れているように見えて実は誰かに男として視られたい青年と、
男の恰好をしていたけれど実は誰かに女として認められたかった少女と、
子供を造る事が出来なくて子供を拾ってきた人たちの話。

「男の癖に柔らかく笑う女の恰好してることが馬鹿らしくなった」

そう青年は言い、事情を知らない少女は怒る。



本当はずっとどこかで投げ捨てたかったけれど、本当はずっとどこかで認められたかった、幼い頃から背負ってきた覚悟が形になって表れたものを、青年は最後まで認められたい相手である母に見せないままだった。それがうまれた頃には母は狂っていて、そのまま亡くなってしまったから。
 見せていたらどうなっていたのか、正直言って読者としては気になるが、恐らく今度こそ母親はもしかすると彼岸から帰ってこれなかったかもしれない。病室で毎日、小学生の息子に謝り続けている間だけは正気だったのに、それさえ塗り潰していたかもしれないのだ。

 どうでもよくなって、どうでもよくなくて、笑顔から無表情、そして涙をこぼす事ができてやっと青年は呪いを消化できたのだろう。
 母と自分の呪いを、命の代わりに最後青年は捨てる。
 ささやかなそれが消えていく事でやっと、青年は「父にならねば」という気持ちをも昇華させられたのではないだろうか。
 子供は、「母」にとっても、新たに「父」となろうとする人にとっても大事なものだったけれど、その繋がりは歪なままでは綺麗であっても脆いものになる。

 けれど、大人同士なら歪であっても認め合えるのだろう。互いに手を貸したり撫でることが、背伸びをしなくてもできるのだろう。

 歪だからこそ知り合えた、おんなのことおとこのことして出会った青年と少女は、おとこのことおんなのことして最後共に歩いていく。
 きっと生涯、少し残るささやかな呪いと想いと共に生きていく。



******


初めて読む作者さんかつ作風でしたがかなりドストライクでした。

自分の本音を誤魔化して笑って着込んだ結果それを認められることに嫌悪を抱くさまと
澱で濁っているけれどひたむきで乙女特有のときめきを抱いて邁進し続ける『彼女』の若くて思い切っているけど、どこか危うい『彼』に憧れを抱くさまと

都合良くいかないところと都合良く行き過ぎる所と世間の、読者に分かってしまう価値観にいたぶられていくところと

が、よくある裏社会ものや性癖ものとは一線を画す形で目を釘付けにしてくれました。

『ぼくは、おんなのこ』や『テンペスト』など性別系SF、『たましいのふたご』『リバーシブル!』などのジェンダートリックが好きな方に是非お薦めしたいです。


おとこのことおんなのこ [ 米代恭 ]





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最終更新日  2017.04.04 23:32:05
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