Laub🍃

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2017.08.06
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カテゴリ: 🌾7種2次表
「二人とも俺が居ないと駄目なんだから」
「あの人は俺が居ないと泣くか怒ってる」

 そんな思いが今日も俺を支えている。


 お蔭で今日も道に迷った時、俺はどうすればいいか分かる。

 どこに行けばいい?

 迷っている人の後ろについていけばいい。
 あるいは、立ち止まっている人の傍に一緒に座っていればいい。

 それが今の俺の生き甲斐だ。


 他人の人生に介入する。

 自分に依存している相手、自分が依存している相手の為、俺は生きる。
 そんな大義名分の為ならどこまでも突っ切れる。




ーーそれがきっと俺の欠陥だ。













+++前置き+++









これは嵐視点の独白多めのSSです。巨船編、特に20巻の辺りの台詞引用しています。


7種の中でも解釈に迷う20巻「逃げられたんです」について嵐の過去、嵐の行動理念と併せて意図を考察していたらこうなりました。

・あの言葉を嵐は世の中の絶対正義として言っているわけでなく、田村先生もきっとそうした万能の言葉としては描写されてない。
・嵐の為の言葉で、嵐の青臭くエゴで半端に共感と理解した様子を示した言葉。
・安居への絶対的な切り札でもなく、ある種の押し付けであり、賭けの言葉。

・……( 解釈続き→ )……

といった解釈を前提とした話です。





さて、前置きと御託はこれくらいにして。







ー以下、悪夢の中で不定の狂気状態な安居に対するいいから黙って救われろマン嵐の独白SS。
友情のような、喧嘩腰のような。









*********************








 人の世話を焼く事で心を保つその足を俺はどこかで見た事があった。

 俺の足と同じだった。


 背負わなくていいものを背負いつづけるその人の背中を俺はどこかで見たことがあった。
 自分の欠点や、向けられる蔑視の目を自覚するあまり露悪に走る蝉丸。
 真面目すぎて、要領が悪くて後悔や危険への怯えに囚われるナツ。

「先頭で風を受けるタイプに見える」

 ー踏み込まなくていい場所に、火の粉を被ってまで突き進む、あの人。

 だからきっと苦労の多い人生を歩んできたんだろうと思った。





 そんな相手と同じ辛い目になんて遭うことはできない。下手に共感するのも失礼だ。
 体の怪我ならともかく、心の傷までは。

 だからせめて、逃げ出す痛みなら共感できるようになるだろうからー叫んだんだ。

「あなたは逃げられたんです」

 あの人の言葉が、「お前には絶対救えない」と言っているみたいだったから。



 まるで、母さんを喪った時の親父のようなその声を止めたかった。

「分からないなんて」

 どうせ分からないなんて、言うな。

 …秋の村の後に出会ったあの人の話を、あの時の俺は碌に聴けなかった。
 だからちゃんと今度こそは。

「一緒に」

 一緒に、行く。

 助けて、一緒にあそこに帰るんだ。


 これは当たり前のことだから、押し付けるように俺が好きでやってることだからありがとうは言わなくていい。
 誤魔化しで構わない。三文芝居で構わない。
 目の前で蹲ってるままじゃ何も見えない。







 …安居さんがこれまで居た場がどんな所だったのかは知らない。
 何に価値を置いて、何を理解できる場で育ってきたのかは知らない。

 それこそ、俺の言葉の真意だってどう言えば伝わるのかが分からない。
 どうすれば貴方を助けられるかもわからない。


 貴方は詳細を語らない。

 貴方の傷口が膿み過ぎて、自傷のような形でしか扱い方が分からないのかもしれない。

 貴方が声を、心を伝えたい相手が耳を塞いだからなのかもしれない。
 聴かれても、酷い反応しか得られなかったからなのかもしれない。

 だけど、ここに居るのはその相手じゃない。俺とナツだ。

 俺は聴きたい。ナツも、耳を塞ぐような子じゃない。

 貴方が何に今までも、そして今この時も支配されているのかも具体的には分からないからー
 今は、押し付けるように、DVから助けだされた被害者に「幸せになるのが最高の復讐」と似たようなことを言うしかないけれど。

「そのテストは受けなくてよかったんです」


 俺に言われたからだと、『逃げ』る理由にしていいから。


「でも」


 ここは譲れない。



「今」


 安居さんは素直すぎる。だから過去に縛られ続ける。
 誰かが鎖を砕かないといけない。

 ー喩え、それが安居さんを傷付けるとしても。

「俺らは」

 安居さんはそして、行動力がありすぎる。だから俺達を助けられる。
 だけど、そのままじゃー上下関係のままじゃ、この言葉はきっと安居さんには届かない。

 ーだから、


「自由です」


 どうか、出てきてください。


 貴方達の為にも
 ー俺らの為にも。


 貴方が蹲る、想い出の洞窟に何があるのか。
 何故貴方がそこに縛られているのか。
 貴方が悲痛な声で叫ぶ茂さんは、どんな人だったのか。


 ーここを出てから、教えてください。


















 それなのに、どうして。


 ーどうして、心地いい潮風の中

貴方が口にした人がー


「花は死んだ」


『俺達が 殺した』



 俺が、助けたいと望んだ、安居さんの口にした人がーーーーーーー

よりにもよってなんであの人なんだ。




これは、裏切りだ。















安居のお節介はエゴ。
嵐のお説教もエゴ。
花の先頭切って行くところもエゴ。
ナツの気を使い過ぎる所だってエゴ。


安居の告白が嵐に秘密にし続ける(そして嵐にとって大事な人を傷付けた)罪悪感を解消するためのものと考えるとそれもまたエゴ。


だけど、エゴは必ずしも悪いものばかりではない。





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最終更新日  2017.08.27 06:58:54
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