Laub🍃

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2017.08.15
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
※絵本「たべてあげる」のパロです。SF入ってます。
※メリーハッピーエンド(本人だけが不幸)





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「……痛い」


そう、黒い安居はいいました。

「僕ばかり殴られる」

 正義漢の強い黒い安居は、傲慢で常に怒っているような卯浪にとって標的にしやすい行動を取っているのでしたが、安居はそれを改める気はありませんでした。

「でも、仲間が殴られるのよりはいい」


 そこに髪が全部白くなった安居があらわれて言いました。




安居が「アンタはだれだ?」と訊ねると、小さな白髪の大人は「大人の安居」だと名乗りました。

 白い安居は黒い安居が嫌いなものを代わりに経験してあげると言います。
その宣言通り、白い安居は代わりに殴られ、代わりに赤い部屋に入り、代わりに茂の鬱憤を訊いて、代わりに先生に仕組まれた罠を止めていきます。
 白い安居を黒い安居はすごいと思い、自分もそんな風に強くなりたいと言い出しました。
 ですが白い安居くんは目を細め、お前は知らなくていいと言います。

 一方で要先輩ー白い安居くんは要さんと呼ぶのですがーは、黒い安居が自分の思った通りには成長していないので焦りを感じはじめていました。

 痛みを食べる度に大きくなり、そして更に目が死んでいく白い安居。
 黒い安居は、白い安居に嫌いなもの以外も見せてあげたいと思いました。
 けれど白い安居は自虐の如く、痛い目にばかり遭いたがります。
 茂がそんなことをしていたら止められるのに、黒い安居には白い安居の止め方が分かりません。

 そんな奇妙な、どこかずれた関係でしたが、黒い安居はリーダーとして人望を保ち続け、白い安居は危機管理を担当し、と彼らは一見危なげなく日々を渡っていきました。



 この状況に白い安居は、「いやだいやだ」と泣き叫びました。
 しかし、周りの皆は、強い白い安居を新たなリーダーに据えようとします。
 その泣きそうな声は彼らにとって聞き覚えのあるものだったからです。
 髪は白くとも、顔が若干心労で老けていても、日々暗闇や、すっと通り抜ける時などに忠告された時に確かにその声を聴いたのです。
 その記憶がいつにか混ざって、安居くんの変化を自然なものとして受け入れていたのです。



 そう言う茂の目には、安居への疑いはありません。
 だって、黒い安居は銃をまだ人の的に向けて撃てないのですから。

 すり替わってしまった白い安居は撃てるのに。
 白い安居。

 未来からやってきた、安居のかけら。
 彼は、黒い安居を仲間とともに未来に送り出したら、自分はどこかに身を消すつもりでした。
 夏Bや秋の言ったように、外を知り、外の人間と一緒に滅ぶのも悪くないと思っていました。
 それなのに、こんなことになってしまいました。

 要さんは何でもできるこの時代の外からやってきた白い安居くんを手放しで褒めます。

「これでいいのか」

白い安居くんは要さんがかつて言ったせりふを踏襲しましたが、誰も答える人は居ませんでした。





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最終更新日  2017.09.21 12:51:52
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