Laub🍃

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2017.09.25
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カテゴリ: ◎2次裏漫





教わったままに巣食われる

********

間違ったことはしていない。

怒りと憎しみに身を委ねた。

これは正しい怒りだ。
だから俺は間違っていない。


俺のする事は間違ってない。







奪われるばかりの肥溜めのような人生。
焼かれて潰されて埋められて、墓を造ってくれる人も居ないまま、他の生き物の餌になるのが当たり前。
だから、生きているだけで、生かされているだけで、有り難く思うべき。

それが俺達の運命だった。
そうやって俺達は育てられた。
それが人生だと俺達は教えられた。

そしてあの黒い悪魔は俺達に教えたんだ、奪う側になれと。

悪魔は死んだ。
最後に残った奴も俺達の手で殺した。
もう二度と顔を合わせない筈だった。
だからこそまだ耐えられたのに。

悪魔の娘が目の前に居た。
父親に送り込まれたことは明白だった。
奴が俺達を馬鹿馬鹿しい理由で殺し合わせた事を、そいつはかけらも受け容れようとしなかった。

赦せなかった。

涙の一つでも零されたら、土下座とはいかないまでも一言でも父が非道な事をして申し訳なかったとでも言われていたら違っていたのかもしれない。

赦せないなら傷付けて歪めて潰すしかないだろう。

俺達がそうされたように。

自分と同じ所に引きずり落としたかった。

自分達が壊されたように壊してやりたかった。

自分達が汚されたように汚してやりたかった。

目の前の目障りな塊を潰すことしか頭になかった。

後の事は考えていなかった。
かつて志半ばで悪魔に殺された仲間達と、今一般人どもに奪われそうになっている仲間の背中が過って、それを、塊を傷付けることで掻き消した。

全てが終わって茫然としている内に、傍らにあった銃が消えていた。

何故だろうと辺りをぼんやり見まわしていたら、斜め後ろに居たそいつと目が合った。

「しね」
「……」

かつて銃が暴発して、目と手をぐちゃぐちゃにした仲間が思い浮かんだ。

あいつの名前は何といったか。

「しね、しね、しね、しね、しね」

ガチガチと震える手でそれを構えているそいつに手を伸ばす。

「しねええええっ!!!」

使い慣れていない筈だったんだが、的が近かったからか、動かなかったからか、見事に命中した。


「……がっ……」

肺だ。肺にぽつりと穴が空き、続いて反射的に掲げた腕、続いて喉、脚、腹。
撃ち尽くした銃の引き金をなおもそいつはガチガチと引き続け、使えないと見るや放り出して俺が閉めた戸を開け放った。

俺が破いた服など気にも留めず。

「ひゅー…ひゅー……」

前に動物舎で聞いたことがある、肺に穴が開くと苦しんで死ぬと。
俺が撃ち殺したあのガイドは、どこに穴が開いていただろうか。

『……いけないんなら』
「……!?」
『僕は行けないと思う』

走りこんできたのは、見慣れたふわふわとした長髪。
けれど俺の頭には置いてきたあいつの声が響く。


あいつが来ていたらどうなっていたんだろうな。
あいつは弱いけど、俺みたいに、こんな風に、失敗することなくいられたんだろうか。

大嫌いなあいつらに頭を巣食われることもなく、醜く死んでいくこともなかっただろう。
教わらなければ生き方も分からない俺と違って。


綺麗に落ちていくあいつが過る。



自ら死を選んだあいつは、最後、笑っていた。

ごめんな。

せっかく未来に送ってくれたのに、


こんな風にしかなれなかった。


全部、無駄になってしまった。




【GAME OVER】





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最終更新日  2018.03.23 21:13:59
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