Laub🍃

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2017.12.22
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カテゴリ: ◎2次裏漫
幼馴染の彼女を一番理解しているのは僕だと思ってた。

女勇者として押し付けられた期待や理想を努力して努力してこなし、それでもなお英雄らしく快活に笑うその姿に、村人Aの僕は恋をした。

それなのに、魔王の手先によって作物が毒に侵され、村が不信感と絶望に沈んでいく中で、彼女は別の男の子を孕んだ。
そいつは彼女を庇って死んでしまった。
狂気に侵され村を焼いて回る村長をぼろぼろの体でひきつけながら、笑って見せた。
彼女の手を引く僕に「任せた」とさえ言ったのだ。

思い出せばむかついてしょうがない。
だがそれをぶつける相手はいない。

彼女は与えられたものに弱かった。

だから勇者なんて貧乏くじを後生大事に守り続けていた。
そして今、彼女は押し付けられた結果生まれた『それ』を、忘れ形見として大事に育てている。


僕はそのあいつに似て、けれどずっと柔らかくすぐに潰せてしまいそうな顔を眺めて笑う。
『それ』も、何がおかしいのか笑う。

小さな人形を召喚して、目の前で遊ばせる。
キャッキャと笑うその顔を切り裂きたくて、そうなる前に離れたいと思うのに、彼女がそうすることを赦してくれない。
彼女が一番信頼しているのは僕で、そうして僕よりずっと彼女の方が狩りがうまい。
だから僕はただモンスターから薬草や肉を得てくる彼女を、『それ』をあやしながら待ち続けている。

拷問だ。


いつか彼女が僕を愛する時が来て、そうして子供が出来たのなら、こんな感情ともおさらばできそうだ。

けれど彼女はきっとぼろぼろのあの姿にだけ絆された。



つまるところ同情だ。

食べられる食材を探して村の外まで行って、案の定彼はモンスターに襲われていた。
ぼろぼろになって死にそうだった彼を彼女は連れ帰った。

接触があったとするならそのあたりだ。
きっともうすぐ死ぬから最期の頼みとでも言ったのだろう。



僕も同じことをすればきっと彼女は許してくれるだろう。
けれどそれをしたらもう二度と彼女と一緒に歩くことも、何かを頼まれることもないのだ。


『それ』の柔らかい手と唇に触れる。
これは、彼女の胸や唇に触れたのだ。

憎らしくて羨ましくて、そんな浅ましい自分に吐き気がして、僕は少しだけ泣いた。





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最終更新日  2018.12.22 04:22:04
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