Laub🍃

Laub🍃

2018.02.17
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
刺激に餓えていた。
痛みのある関係が良かった。

生き延びられるだけの運動神経に頭脳、そして危機管理能力を備えているからこそ斜に構えられる己が好きだった。

だが要さんや貴士先生から本当の死を与えられかけた時、俺は無力だと実感した。

少なくともやりたくない殺しをいつかしなければいけないというくらいには無力だった。


やっと、本当の意味で、俺はぬるい世界で、ぬるい認識で生きてきたんだと気付いた。


だから一般人にも奴等の生ぬるさを自覚させてやりたかった。
安居たちを壊した世界に復讐して、同じ場所に引きずり込んでもやりたかった。


だが。

夏Bはふわふわしていてつかみどころがなかった。

俺達の憎悪も悲哀も絶望も渇望も全て、呑み込むしかなかった。





あれから何年が経ったのか。

全国を巡り、外国で生き残りと出会い、子孫繁栄の第一歩を踏み出した今。
そんな今でさえなお、俺は未だに大人になれていない。
安居もきっとそうだ。

大人になる為に本当は必要だったかけらを、あの試験続きの日に置き去りにしてきてしまった。

それは例えば優しい痛みだったり、甘っちょろいこそばゆさだったり、生ぬるい苦みだったり、そんな沢山のかけら。

拾ったやつら、捨てられなかったやつらは皆死んでいった。

もはや手に入らないそれらを、俺達の子供世代は、今、手に入れようとしている。


鈍い痛みと、鋭い小さな痛みを抱えて。
こんな日々がずっと続けばいい。


これがきっと、あの頃夢に見た未来だ。





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最終更新日  2019.02.28 23:04:51
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