Laub🍃

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2019.09.22
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
糸上の恋 

 目が覚めたら、寮に居た。
「えっ」
 呆然としたまま二段ベッドの上の茂を起こし、ランニングをし、要先輩に挨拶をして、朝食を食べて、授業を受けて、茂を庇って、そうして一日が過ぎて、俺は布団の中で呟いた。

「……え?夢?」

 一体どちらが夢だったのだろう。
 今居る光と不安溢れる現実、これまでの惨めな過去。
 急速に過去の自分が遠ざかっていく、今まで自分が現実だと思っていたものはすべて夢まぼろしだったような気がしてくる。


 -その時茂の声がした。



「……」

 -思い出した。俺は確か、どこか、違う世界の俺に似た誰かと人生を交換したんだ。
 その意味がちょっとよくわからなかったけれど、今日ぱしぱしと感じた些細な違和感がその誰かが人生を交換したいと思った理由なんだろう。

 そう思いながら俺は眠りについた。
 -その理由を翌日知るとも知らずに。






「安居!女はここででしゃばるな!」

「-----え?」

 よく意味が分からなかった。
 俺が、女?

 体を見下ろす。
 そういえば昨日はトイレに入らなかった。


 だから気付かなかったーーーーいや普通気付かないだろこんなん。
 わけがわからない。

 そうして何より気がかりなのが、性別によって、中身が同じでも扱いや対応接し方が変わってくるということだった。

 今はまだ10歳だが、これから性差が大きくなるにつれて俺はさらに違う扱いを受けることになるのだろう。

 例えばどんなー


 誰かに殺意と憎悪を抱かれ、それでも一緒に居なければいけなくて、一人でどこかに抜け出そうとしたら犯されかけるような?


 ーぞっと肌が粟立った。

 どこかの世界で、自分と似た誰かの声が笑った気がした。

【続】





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最終更新日  2020.09.25 03:10:03 コメントを書く


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