Laub🍃

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2021.11.05
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本能が警戒していた。

彼に醜い本音を悟られるのはまずいと。





誰だって自分が愛されたいに決まっている。
一方で他人に愛を向けるのは下手くそなことが多い。
愛を向けたとしても恩着せがましく愛してやったなどと思うことの方が多い。


見返りを求めすぎて、或いは愛が重すぎて、愛することさえ許されなくなって初めて、せめて愛させてほしい愛されることは望まないからと言えるのだ。

「親衛隊の動きが最近おかしくてさあ、もういっそ解散させようと思うんだけど」

それが私を含んでいるかどうかは確かめる勇気がなかった。

思い当たる節がないではなかった。
彼への想いを綴った重い手紙を送っていたのだ。
けして負の感情や他者への嫉妬など含めていなかったが、それも弾かれてしまうのかと思うと私のなかでなにかが折れた。

それからずっと出過ぎぬようにしていた。
憤りにさえ近い爆発寸前の執着を分散させるべく他の人に目を向けた。
それなのに彼はそんな私に「俺のことが嫌いになったのか」と問う。失う寸前だからこそ惜しいというやつだろう。
なので私はお暇を出された時素直に従ったのだ。

それなのにどうして彼が今ここに居るのだろうか。

「嫌われていたと思っていたが、俺のことが本当は好きだったんだな、お前は」

嬉しそうに語る彼への憤りを隠せない。

だって私の後ろには彼に想いを寄せたが玉砕した少女が踞っている。


私が少女を慰めていたところへ現れた彼。

ずっと私の動向を見ていたというのだろうか。
その執着と手間に背筋が震えた。恐怖と歓喜。

願ってもない状況だった。
彼の元親衛隊員としてはここで彼に迎合すべきだったのだろう。


「私は確かにあなたのことを未だに慕っておりますが、けれど今の私ではあなたの隣に立つには不相応なのです。能力も低く、心も狭い」
「……」
「離れていても、愛を送らせて下さい。それだけが私の望みです」


求めたくなかった。
弄ばれたくなかった。
見捨てたくなかった。


彼は立ち去った。

私は泣いている少女を抱きながら、自分の体の震えと涙を必死に抑え込んだ。





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最終更新日  2022.11.30 02:26:56
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