・電子書籍については五木氏は早くから興味を持ち、この5年間ほどは落胆の中で、電子書籍の推移を見守ってきた。電子書籍のメリット、デメリットや、業界の動向を的確に理解されており、しかも、電子書籍というメディアを見る視点が柔軟で、示唆に富んでいて驚いた。
・電子書籍に興味を持った理由は、次の3つ。
(1)新しい技術、メディアに対する関心
(2)容量制限がない電子書籍の普及で、現在持ち歩いている重い資料が軽くなるのではという期待
(3)埋もれてしまった作品にもう1回光を当て、読んでもらえるのではないかという期待、「それが、一部実現した部分もあるが、大部分が実現されていない。この5年間ほどは落胆の中で、電子書籍の推移を見守ってきた。
・昔、やっていた音楽の仕事も、ディレクターやプロデューサーより、今は、エンジニアがメインで音を作る時代であり、電子書籍もそうなる。
・ただ、エンジニアリング優先に疑問はあり、スティーブ・ジョブズが言ったとおり「いちばん最初はアイディアが重要」
・電子書籍リーダーは、読みやすく、読んでいて紙の本のように快感があるものが必要。
・これまでの電子書籍リーダーはエンジニアが技術主導で作っているから美的感覚がなく、機能説明ばかりが先に立ち、『ああ、いいね。これなら文庫本持って歩くよりいい』と思わせるものがない。
・私の対談相手は1000人を超え、36年間1日も休まずにやってきた連載エッセイもあるが、こうしたものの出版は、電子の無限の容量の中でないと無理。
・価格は、レアな書籍に関しては、高くてもいい。そういうレアなものがないからいまの電子書籍はダメだと思う。
・各社の電子書籍サービスで、タイトル数が何千冊とか何万冊とか言っているのでは話にならない。全地球上の書籍が電子化されているというくらいやってほしい。
・書店に行って並んでいる本は、自分の全作品の2%くらいしかない。図書館でさえ、最近は古い本は廃棄されて消えていく。短編の中で、とくに自分が愛着があり、ぜひ読んでもらいたいと思う本が次々に絶版になっていくのがつらい。
・今回の全集で短編3作品115円という価格についても、App Storeで課金する場合の最低価格が115円だからで、読んでもらえるなら、1作品10円でもいいと思っている。
・全集でも収録できない作品があった場合には、著作権料を放棄して青空文庫にお願いして、無料でいいから多くの人に読んでもらいたいという気持ちもある。あるいは、今回のノベリスクの中でおまけというか、これを購入してくれたならおまけに付けますという形で配信するというのもあるかもしれない。
・著作権については、わたしは、著作権保護期間の20年延長には賛成ではない。個人的には、著作権は死んだときに終わっていいと思っている。埋もれている作品を出してくれるなら、むしろこちらで少し金を出してもいいから出してほしいという気持ち。
・電子書籍を読む人たちは、基本的にタダを期待しているんじゃないかという気持ちが大きく、その中にビジネスを持ち込むことは難しい。
・従って、電子書籍はただちにビジネスにはならないだろうが、電子書籍の普及のため、捨て石覚悟で、講談社の話に乗った。
・記者からの「帯の推薦文や見返しなど、紙の本の良さは電子書籍ではありませんが、それについてさびしいと思われることは」との質問に「旧世代の人間だからそれはあります。でも、それは慣れだと思います。新しいメディアには違う良さがあり、新しい使い方ができると思う」と即答。
・今の活字は、紙に印刷するために100年かかって作ってきたもの。電子書籍には、電子書籍用の活字から、誰かが作らなくてはならない。それをやらないで、紙の書籍用の活字をそのまま使っていてはダメだと思う。
・電子書籍は、昔のポルシェのようにモノとして愛するものになっていない。書籍は文系の人が作って来たから、電子書籍でも、技術者プラス編集者のチームワークが絶対に不可欠であるし、編集者が非常に大きな役割を果たすと思う。
・紙の本は日焼けするし、湿気で歪んで汚くなっていく。大事にとっておいてもそうなってしまう。グーテンベルグが活字印刷を始めた頃には、きっと、羊皮紙にペンで手書きした本の良さは、金属の活字で印刷した本なんかでは代えられないときっと言っていたと思う。きっと電子書籍も同じだろう。
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