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時は明治。
?
大正?
昭和初期、かな?
そこら辺のことは、
私の脳内記憶担当者が、
風邪をこじらせて、具合が悪
え?
ご不在?
え?
担当者、退職しちゃった?まじ?
え?
もう 6年も前の話?まーじー?
えー…?
えー、
ま、そんなワケですので、
そこら辺のことは、
うやむやに、薄暗がりの方へ置いとかせていただいて。
まぁ、人々が、着物着てたり、
お金持ちとかハイカラさんとかは、洋服着てたりする時代。
100円、200円が、大金な時代。
壱百円也。弐百円也。とか、書いちゃう時代。
横書きの文字をまだ、右から左へ書いちゃうような。
そんな時代。
いつからか、気を失っていたようだ。
気がつくと、
手には、
銃が
握られていた。
黒く、重たい、拳銃が。
目の先には、
床に両ひざをつき、
突っ伏して、
カールした長い髪を床に広げ
大げさに泣き叫ぶ、
女がいた。
自分が、駆け落ちしようと、
今日、まさに駆け落ちするはずだった、男の
妻だ。
『お父さま!お父さまぁ!』
カールの女と床の間には、
その女の実父が、
横たわっていた。
腹から、どす黒い、血を流して。
状況を把握しない前に、
自分が拳銃を握っていることすらも、気がつかない
その前に、
警官がどやどやと、がさつに部屋に入ってきて、
乱暴に取り押さえられた。
『私じゃない!違う!私は殺してない!!』
目の前の死体。
死体の腹辺りから流れ出た血。
自分の手の中の拳銃。
自分を取り押さえる警官。
少しの時間をかけて、なんとか状況を理解して、
叫んだ。
警官に引きずられながら。
必死に。
叫び続けた。
その声が、どれほど必死でも、
それがたとえ、事実でも、
この状況の上で、
その効力は、皆無だった。
あの日、
透明な思いだけを一緒に
駆け落ちをするはずだった男は、
警察の取調室にきて、
拘束の身である自分の目の前でこう言った。
『この銃は、私のものです。
彼女が勝手に持ち出したのでしょう。』
嘘!
ウソだ!
私、何も知らない。
何もしていない。
拳銃なんて、
知らない!
裏切られたのだ。
誰よりも信じていたのに。
男は、金と2人の子供を選んだ。
自分ではなく。
事実が明らかになれば、
資産家の家に生まれ、何不自由なく育ってきた
2人のかわいい子供たちは、
スキャンダルに巻き添えられ、
路頭に迷うことになるだろう。
男は、それを最も恐れたのかもしれない。
子供を、
子供たちを、
とても大切にしていた人、だもの。
でも!
にわかには信じることができなくて、
男の名を叫んだ。
何度も何度も叫び連ねても
その声が、澄んだ涙に透明感を帯びても、
それは、誰に届くこともなく、
空(くう)に溶けて消えた。
『有罪』
『25年の懲役に処す』
ろくな弁護もつけてもらえず、
家族にも知らされないまま、
判決は下された。
翌朝、
新聞の活字が、
まず妹にそのことを伝えた。
『お姉さま?!お姉さまが?!!』
『まぁ、シンコお嬢様が有罪?!
いったい、なんの罪で?!』
妹の隣で、
お手伝いの間抜けな婆さんが
間抜けな響きで、
そんな風なセリフを吐いた頃。
時間だ。
もう、行かねば。
もうこれ以上は、見ていられない。
仕事に遅刻してしまう。
昼ドラ 愛の劇場 『貞操問答』第35話。
後ほんの数分で終わるっていうのに、
私は仕事に行かねばならない。
最後まで見ることが、叶わなかった。
誰か。
誰かーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの後どうなったか、
教えてくれーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
PS.実は、最終回かと思ってたんだ。
でも、違ったみたい。
最終回のときにも、似たようなコト、するかも。
そのときは、許してね。