鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
000000
HOME
|
DIARY
|
PROFILE
【フォローする】
【ログイン】
ねぇね2人と双子っちのママのお部屋。
「無題」第43章~第47章
実は頭中将の別邸は月姫(皇后)の母君の別邸の隣にあった。以前は一つの大きな別邸であったが、降嫁してしまった頭中将のおばあさまと、月姫の母宮のために半分に分け立て替えられたのだ。もちろん帝の曾おじいさまである亡き院の縁の別邸ということで、特別視されて検非違使でもそう簡単に入って来ることが出来ないのである。
頭中将と月姫は車に乗り込むと、連絡係の萩を残して隣の別邸に向かった。そしてふたりは別邸に住む頭中将の祖母に挨拶に行った。
「おばあさま、こちらは朝ご報告した姫君です。気に入っていただけるとうれしいのですが・・・。」
すると月姫が自己紹介をする。
「月子と申します。突然こちらにお世話になる上、正装もせずお邪魔致しまして大変申し訳なく思っております。よろしくお願い申し上げます。」
「まあなんてかわいらしい!きちんとした良い姫をお選びになったのですね。でもどうして本邸にお連れしなかったのですか?」
頭中将は苦笑して言った。
「おばあさま、母上の性格はご存知でしょう。勝手に私の子を身籠った姫を本邸に入れたらどうなるかを・・・。あの方は息子が思い通りにならないと気が済まない方だから・・・。」
「そうですわね、私のところに連れてくるのが賢明ですわ。月姫、この私を気にせずに自分のおうちと思ってゆっくりなさってくださいね。将直殿、いつまでこちらに?」
「今日はこれから宿直ですので、明日から当分近衛府に当分のお休みを頂くつもりです。もちろんおばあさまのお名前をお借りすることにはなりますが・・・。」
「よろしくてよ。このようなかわいらしい姫君をお迎えになったところですもの。半月でもひと月でもどうぞ。ご結婚のお祝いとして、私から数点贈り物をさせていただきましたわ。きっとお役に立つと思いますわ。」
「助かりますおばあさま。さ、部屋に案内しよう、月姫。」
「はい・・・中将様。」
月姫は手を頭中将に引かれて部屋に入ると、急なことにもかかわらず様々な調度が揃えられていた。
「おばあ様が言っていたのはこれかな?」
といって鏡や櫛、そしてきれいな反物を手に取り、月姫に手渡す。そして反物を月姫に合わせると言った。
「これはいい。これでかさねを作ろう。こちらは男物だな・・・これは私にかな・・・。」
「中将様、内裏とはまったく違った表情をされるのですね・・・。中将様、その反物お貸しください。この私があこめをお作り致しますわ。あこめなど何度も・・・そう何度も・・・。」
月姫はここ最近帝のあこめを何枚も作っていた事を思い出した。帝は必ず縫って差し上げたあこめを着てくれていた。そしてあふれんばかりの笑顔で喜んでくれた。
「姫、無理をなさらなくても・・・。家のものに作らせますよ。健やかな子を産んでいただけたらそれで・・・。あ、もうそろそろ出ないと・・・宿直ついでに休職届けも出してまいります。姫・・・。」
そういうと頭中将は姫を抱きしめると名残惜しそうに部屋を出て行った。部屋にいる女房達は、二人の仲睦まじい姿に見とれている。すると一人の女房が近付いてきて姫に聞く。
「私は高瀬と申します。頭中将様の乳母の子ですの。さすがに私が小さい頃よりお仕えしてきた方ですわ。このようなお綺麗な方を妻に娶られるなんて・・・。左衛門督から頭中将になられてから、ずっと恋わずらいを・・・。特に長谷寺からお帰りになられた頃から寝込まれていたのですよ・・・。ここ数日まで・・・。それが急に元気になられたと思ったらこうして素敵な姫が現れて・・・。先程もここにいるもの皆お二人が並んでおられる姿を見て、絵物語に出てくるようなお二人だと感心しておりましたの・・・。私達も頭中将様のあのような表情は見たことがありません・・・。」
姫は扇で顔を隠して苦笑する。
「わからないことがございましたら、この高瀬にお申し付けください。頭中将様からいろいろ任されましたので。こちらにいる女房達も皆頭中将様がお選びになったものたちばかり。決して頭中将様の母君に見つかるようなことは致しません!ご安心を!」
(また中将様のお母様のこと?よっぽどのお方なのね・・・。)
「中将様の母上様?」
すると様々な女房達が集まってきて母君の事を言い合う。話によると、中将の父は源姓でありながら、大納言まで登りつめこれからという時に病で亡くなった。まだ幼かった中将を女手一つでここまで育て上げた方で、一人っ子であった中将を大変可愛がり、厳しくしつけをされたという。先帝や今上帝の信頼もあり、元服後従六位上左衛門大尉から十年で従四位下頭中将まで出世したという母君ご自慢の息子。これからも出世間違いないということで期待も多く、母君の一方的な縁談に相当困っていたらしい。姑との仲もそういうことからか良くもなく、中将は母君が口を出されるとすぐにこちらのおばあさまを頼って逃げてくるというわけだ。内裏にいるときの中将よりもこちらや姫の前の中将が本当の中将だということもわかった。姫は内心少しほっとした。女房達も本邸の窮屈な生活からこちらに来ることが出来てうれしいようである。
次の日のお昼前、宿直から帰ってきた頭中将は少し疲れた様子で姫の前に座る。そして姫が笑顔で迎えると疲れが飛んだ様子で微笑む。
(公達の妻の生活ってこんな感じなのね・・・。参内から帰ってきた殿をこうして笑顔でお迎えして・・・。もし常康様があのまま少将であられたら・・・今頃中将になられいてこのように・・・。)
ふっと悲しげな顔をする姫に頭中将は気がついたが、気づいていない振りをして狩衣に着替えた。着替え終わると中将は姫の膝に頭を置くと、姫は微笑んで中将の頬に手を当てた。
「中将様、宿直でお疲れでしょう。私の膝でよろしければ少しお休みに・・・。」
「ありがとう、そうするよ・・・。」
そういうとすぐに眠ってしまった。姫は高瀬に単を持ってこさせると、中将の体にかけた。姫はもともとこのような生活がしたかったのだと気がついた。宮中のような何かと儀礼の多い堅苦しい生活ではなく、ごく普通の生活を夢見ていたことを・・・。このまま後宮には戻りたくはないと思った。
一刻ほど眠ったのか、急に中将は起き出す。そして女房達を遠ざけると、胸元から文を取り出す。
「あなたに渡そうか悩んだのだけれど、今日御前に呼ばれてしまってね、ついでに宇治に行くなら渡してくれと・・・・。女房達は遠ざけたから、読んだらいいよ。出来ればあなたとの橋渡しを頼みたいようないい方をされたが、当分こちらにいるからと言ってお断りしたよ。」
「そう・・・。中将様・・・嫌な役をさせてしまったようで・・・。」
「いえ、私こそあなたのような方をこうして独り占めにしているのですから・・・。お腹の御子が生まれるまでこうして夫婦のようにさせていただけるだけでも・・・。」
姫は文を開くと帝が大変心配して宇治のことやいろいろ不自由がないのかなど、書かれていた。どう見てもかなり動揺した文字で書かれている。姫は中将にその文を渡すという。
「今の私にはこのような文は必要ありませんわ。中将様、この御文を燃やしてください。今持っておくわけにはいきません。これから一年は綾子としてではなく、月姫として生きなければ・・・。」
「いいのですか?萩殿にでも渡しましょうか?」
姫はそれでも首を横に振っているので中将は庭に降りると従者に火を持ってこさせ、姫の目の前で帝からの文を燃やした。
「これでいいのよ、これで・・・・。」
そういうと姫は部屋の奥に戻っていき、脇息にもたれかかった。そして扇で顔を隠し、中将にわからないように涙した。もちろん中将は気づいていたが、姫のために黙っていた。
第44章 綾姫の秘密
中将は思い出したように姫に言う。
「あ、そうだ。今からおばあ様のところへ行きましょう。昨日の御礼もしないといけない。」
中将は姫の手を取ると、中将の祖母の部屋に向かった。すると客人が来ていた。
「まあ!将直。噂をすればですわ。ちょうどあなたの事を妹宮と話していたところよ。かわいらしい姫を迎えたと・・・。さあ月姫もこちらへ・・・。」
中将と姫は少し焦ったが、素知らぬ顔で対応する姫の母宮を見て安心する。
「まあなんてかわいらしい姫なのでしょう。お子様の誕生が楽しみですわね姉さま。」
「そういえば静宮の姫は、今上帝の皇后で東宮のご生母ですものね・・・。」
母君は少し驚かれた様子だったが、気を取り直して話し続ける。
「いえいえそれほどでも・・・。たいそう帝に気に入っていただいているようで・・・。大変喜ばしいことなのですが・・・。」
「そういえば静宮の姫も小さい頃にこちらに良くこられたことがあったのですよ。覚えていないかしら?将直。あの姫は本当に亡き式部卿宮によく似ておられて・・・。活発で・・・。」
「お姉さまそれは・・・。」
「そ、そうでしたわね・・・。あれは・・・。」
姫は聞き間違いだと思ったが、ここでは聞けずに黙っていた。
「大叔母宮の姫は一度会ったことがありましたよ確か・・・。あの頃は元服してすぐの頃・・・とても活発な姫君で庭の池に・・・私が助けた覚えが・・・。」
(そんなことあったかしら?ここに来た記憶もないけど・・・。)
と姫は思った。
「よくお姉さまは私の姫をぜひ将直の嫁にと・・・。私も一時考えましたが殿がたいそうご立腹で・・・。」
「そうよ!将直に父親がいないそして身分がどうのこうのと言って反対されたのですから!院の皇妹である私が後ろ盾にと言っておいたのにですよ!今でもムカつきますわ!」
「お姉さまそれくらいになさって・・・月姫様がお困りに・・・。」
すると中将が口を挟んだ。
「今日はおばあ様から昨日結婚のお祝いに、様々なものを頂き、お礼を言いに妻月姫と共に参上したのですが・・・。妻は身重のため、これにて・・・。」
「まあ、そうでしたわね・・・月姫ごゆっくり・・・。」
そういうと中将は姫の手を取って部屋に戻っていった。
「なんと仲睦ましい事・・・。やっと将直も落ち着いて出仕できるでしょう。しかし、あの月姫、どこかで・・・。きっと他人の空似ね。」
姫の母君は話を変えようと必死になった。
「お姉さま、亡き式部卿宮様のことは私の姫には言っておりませんし、世間一般には・・・。」
この静宮という方は降嫁される前に一度式部卿宮と結婚し、新婚一年と経たない内に病気でなくなられ、懐妊されてすぐに静宮は未亡人となり、それを承知の上で現在の左大臣に後妻として降嫁した経緯がある。そのおなかにいた子が皇后である綾姫こと月姫である。もちろん綾姫は亡き式部卿によく似た姫君であったがそれを知りつつも自分の三の姫として左大臣は入内させたのだ。もともとこの静宮も御綺麗な方であったが、亡き式部卿宮も当代一といわれる程の整われた姿かたちの方でしたので静宮の父院が是非にと縁談を持ち込み結婚させて懐妊したとたんの不幸・・・。父院も生まれてくる子の為にと現在の左大臣に降嫁させた。もちろん一部の公達しか懐妊されていたことは知らないことで、当時新婚すぐに殿に先立たれたおかわいそうな姫宮として有名であった。こうしたことから、降嫁されてからすぐに正妻でありながらこちらの宇治に住んでいる。
夜が来て中将と姫は同じ寝所の中で中将に腕枕をされながら昼間の話について話をする。もちろん寝所のある建物内は呼ばない限り誰も入ってこないので、安心して話が出来る。
「姫、裳着前のあなたとの縁談があったことなど初耳でした。そのまま話が進んでいたのならこうして忍んだことはしなくて良かったって事ですか・・・。おばあ様は嘘をつく方ではないから本当の話なのでしょう。」
「私と中将様が依然こちらで会ったなんて・・・それも命の恩人・・・。」
「そういえばその様な事があったなと思っただけで・・・。姫が大事な鞠を池に落とされてそれを取ろうと・・・。あの時は本当に驚いたのですよ。驚いて小袖になって飛び込んで実は私も溺れそうになりました。従者に助けられたので良かったのですが・・・。」
そういうと思い出したように笑っている。
「でも・・・母宮さまの言葉・・・亡き式部卿宮って・・・。どうして私がそのような方に似ているというの?お父様は現左大臣藤原実成のはずよ。母宮さまのお父様は帝の亡き曽祖父の院様ですもの。」
「そうですね・・・初耳です。今度出仕したら調べてみましょう。どこまでわかるかわかりませんが・・・。いずれわかることだと思います。さあ休みましょう。」
そういうと中将は姫の額にキスをすると、姫を胸元に引き寄せて眠りについた。姫も中将の胸元に潜り込んで眠りにつく。
第45章 頭中将の母君
秋が過ぎ師走がもうそこまでというの頃、中将は時間をかけてでも宇治から内裏に毎日早朝から出仕して夜遅くなって宇治の別邸に帰ってくる。姫のおなかもだいぶん目立ってきており、内裏から帰って来ては姫のおなかに耳を当ておなかの子供が動く様を楽しみにしている。姫もだいぶんこちらの生活にも慣れて、毎日のように交互で中将の祖母宮と姫の部屋を行き来し、楽しくお話や貝い合わせなどをして楽しまれる。戌の日のお祝いも、この祖母宮がたいそう立派にしてもらい、幸せな毎日を過ごしていた。度々中将が持ち帰る帝からの文を読むが、返事を書かずにすぐに中将に頼んで燃やしてもらう毎日である。今日は夜遅く帰ってきたが真っ先に姫のところへやってきていつものように話し始める。
「やっとお休みを頂けたよ。ここのところ節会や何やらでお休みがとれず、寂しい思いをさせてしまったね。十日ほどこちらにいるから・・・。」
そういうと寝所に入りいつものように眠りに着こうと思ったとき、表が騒がしくなった。二人は急いで上に何かを着る。表では祖母宮と他の方が言い争いをしている。
「気になるから行ってくるよ、ここで待っていて。」
すると祖母宮の部屋の前で中将の母君が祖母宮と言い争いをしている。母君は中将に気がつく。
「将直!こちらで何をなさっているの!ここ何ヶ月も本邸に戻らないと思ったら!こちらにどこの馬の骨かわからぬ姫を託っておられるらしいですわね!私は許しませんよ!」
「母上!私は子供ではありません。妻ぐらい私が決めます。放って置いてください!」
すると母君は泣き叫んで中将をひっぱたく。
「母はあなたの出世のためにどんなに苦労したかわかっていますの?あなたの縁談もすべてあなたの出世のために選んできているのに・・・。わかっていないのはあなたです!」
そういうと泣き崩れてしまった。すると母君の後ろで声がした。
「中将様のお母様・・・怒られるのも無理ありませんわ・・・。」
「姫!出てこないで欲しいと・・・。」
姫は母君の側に座って深々と頭を下げる。そしてお詫びの言葉を言った。
「本当に申し訳ありません。順序をわきまえず、このようなことになり・・・・。本当でしたら先にお母様にご挨拶をしなければならなかったはずを・・・。中将様はとてもいい方です。お母様が大切にお育てになられたからこそ、このような立派でお優しい公達におなりあそばされたのですもの・・・。」
「あなたが?あなたが将直の言う?」
「はい。遅れましたが、月子と申します。このように身重な体ではありますが、よろしくお願いいたします。」
「まあご挨拶はきちんとできる方ですのね。しかしご懐妊されているなんて・・・。まあ下級貴族の姫ではなさそうね。どちらの姫君かしら・・・。」
姫は下を向き、黙り込んだ。
「母上、この方は決して母上が言うような姫ではありません。内裏で知り合ったのですから。」
「じゃあ、女官か後宮の女房ってことね。内裏にお勤めされたの方ならまだマシというもの・・・。でも将直の正妻はこの私が決めますからね!いい?月姫は側室というのなら許しましょう。私帰ります。このようなところに長居は無用です。将直本邸にも顔を出しなさいね。」
そう言うとドカドカと本邸に帰っていった。頭中将はほっとした様子で、部屋に戻ろうとすると、中将の祖母宮が声をかけた。
「まあ、月姫。あの者をこんなに早く引き下がらせるなんて・・・。あの者が来るとつい喧嘩腰に言ってしまうのでいつも大もめになるのよね。月姫いらっしゃい。珍しいお菓子があるのよ。可愛い孫のお嫁さんですもの・・・。大歓迎よ。」
「おばあさま、姫は身重なのですよ。」
「いいじゃない。将直もいらっしゃい。明日ゆっくり休んだらいいのですから。さあ。」
「中将様。いいじゃない。せっかくですのでおばあ様のお相手を・・・。」
中将は渋々祖母宮の部屋についていく。
第46章 告白
「本当にここの家系は男ばかりでねえ・・・私も四人男を産んだでしょ。孫もこの将直の男のみ。このようにかわいらしい姫が側にいると私に姫が側に一人でもいてくれたらと思うのですよ。しかし先ほどはなんと機転の利いた・・・。」
「まあおばあさま。社交辞令ですのよ。とても皆様がお困りでしたから。」
「世渡り上手な方だこと・・・。私はあなたのようなかた大好きよ。」
中将は姫を取られたような気がして菓子をつまみながら出された酒を飲んでいた。二人は楽しそうに話していた。
「さあ姫、もうそろそろいいでしょう。おばあ様、おなかの子に良くないので休みます。」
「そうねえ・・・夜寝ない子じゃいけませんものね・・・。じゃあ明日続きの話をしましょうね月姫。」
姫は頭を下げると中将に手を引かれて部屋に戻っていった。部屋に戻ると二人は寝所に潜り込んで話をする。
「本当に気さくな方だ・・・。大変姫を気に入られたらしい・・・。」
「私の伯母様ですものね・・・性格は私のお母様によく似て。中将様、おばあさまに私のことはなしてはどうかしら。その方が万が一帝に何かされてもおばあさまが味方になってくれたら・・・。お母様のような方なら協力的だと思うのですが・・・。」
「そうですね。おばあさまなら・・・。味方が多いほどいい。こちらにお世話になっている以上おばあさまに言っておいた方が後先楽かもしれませんね。」
中将は疲れたようでいつの間にか眠っていた。姫は中将の寝顔を見てしみじみ思う。
(この寝顔を見られるのもあと半年・・・。毎回帝は私の事を心配して御文をくださる。返事を書かなくても・・・。1年間の期間限定夫婦だけど、これが終わったらあるべきところへ戻らないと・・・。)
最近中将は大変おなかの子を大事にしているようで、寝ていても無意識のうちに姫のおなかに手を当てている。そういえば帝も毎日ではなかったが、同じようにおなかの子を愛しんでいた。だからこそ、後宮に戻らないといけないと決心した。
次の日、二人揃って祖母宮の部屋に向かった。宮は大変喜んで、昨日の話の続きを始めた。そして切りのいいところで中将が話を切り出す。
「おばあさま、ちょっと大事な話があります。他のものを・・・。」
宮は女房達を遠ざけると、中将は話し出した。
「おばあさま、この姫を見て何も思われませんか?気になさらずなんでも言ってください。」
「そうねえ・・・本当にいい?この方初めての懐妊じゃありませんね。それと結構いい家にお育ちね。身のこなしでわかるもの。お歌もお琴も何をさせてみきちんと教育されておりますわ。きっと入内をされるように教育されたのでしょうね。このお顔どこかで・・・・。いえ、そんなはずはありませんわ。あの方は後宮におられるはずですもの・・・。まさか?」
「そうそのまさかです。わけあって・・・私の子を懐妊されて・・・。」
宮は驚いた様子で姫を見つめる。
「お久しぶりでございます。伯母様。妹宮の姫、綾子でございます。」
宮は倒れそうな様子で中将に言う。
「ああああなたって子は・・・帝の・・・・大変ご寵愛されている姫を・・・。ねねねね寝取ったってことなのですか?どういうことかご存知ですの?」
「おばあさま声が大きいです。まあそういうことになりますが・・・・。」
「わかりました。起きてしまった事はしょうがないこと・・・。こちらにおられる事をひた隠しにすればよろしいのでしょ。でもそのお子はどうなさるつもり?」
「後宮には連れてまいれませんので、このわたしの子として引き取ります。」
「当たり前です。本当でしたら即死罪ですよ。ああ、あの時婚約させておけばこのような事・・・。静宮も知っていたのですね。もうずるいわ!このような楽しそうな出来事!どこぞの物語のようで・・・。」
宮は一変して楽しそうな顔で馴れ初めやらいろいろな事をお聞きになる。中将は赤い顔をして恥ずかしそうにするのを見て姫は微笑んだ。姫が一番気になるのはやはり亡き式部卿宮のことであった。以前から中将がいろいろと探りを入れていたのですが、宮家に関わるということで、なかなか核心まで探ることが出来なかった。今回姫はこの宮に告白した理由のひとつに亡き式部卿宮という人物と自分の関わりについて知りたいという一面もあった。
宮は姫の母宮を呼んだようで、少ししてからやってきた。母宮は姉宮の様子に驚いた。
「まあ、静宮。なんてこのような面白い事をこの私に内緒にされていたのでしょう。まあ帝には悪い事を致しておりますが・・・・。私はびっくりです!」
「わかってしまわれたのでしたらしょうがありませんわね・・・。そうですわ!この姫は私の綾姫ですわ。本当に帝には申し訳ない事を致しておりますが・・・。私も最初は驚き呆れてしまったのですよ。本当にうちの姫は後先考えもせず・・・。帝との恋もそうでした・・・。当時亡き帝の兄宮様のもとに入内が内定していたのにもかかわらず、駆け落ち寸前まで・・・。何とかうまくいって相思相愛の方と結ばれ、ご寵愛を一身に受け、東宮と姫宮を儲けられて何不自由なくお過ごしかと思ったのにこのような。別に頭中将殿ばかりが悪いのではないのですよ!子供は一人では出来ません!それどころか最近の帝ときたら・・・・。」
「常康様が何か?」
「あなたがこのような場所でのんびりされていた間にもう一人御妃様をお迎えになられたのですよ!」
「え・・・中将様・・・本当?」
中将は気まずそうな顔をしていう。
「ここのところ忙しくて休みが取れなかったのは後宮に入内があったからで・・・姫には言おうと思ったのですが・・・・。」
中将の話によると、帝が皇后に似た姫君をと所望され、色々な姫を集めて関白家で歌会を行い、式部卿宮家の姫宮を見初めたということらしい。そして毎日のように通われている寵愛振り。世間では皇后は見放されたように噂されているという。
「本当に身近で帝を拝見しておりますが、あのような変わりよう・・・尋常ではありません。昨日もこの私に言われるのです。もう一人入内させようと思っていると・・・。多分私が姫との文の受け渡し役を賜っているからかもしれませんが・・・・。本当に変わられたのか、それとも早く姫を後宮に戻されようとしているのか・・・・疑問なのです。」
「そういえば、式部卿宮様の姫は亡き式部卿宮様の姪に当たられるのですから・・・。式部卿宮様と亡き宮さまはご兄弟ですしよく似ておられたから。」
すると姫は伯母宮に聞く。
「あの・・・ずっと気になっていたのですが、どうしてこの私が亡き式部卿宮様に似ているのですか?」
母宮と伯母宮は少し困った様子でこそこそ話したあと、母宮が話した。
「綾子、いいかしら。あなたは私の殿であられる左大臣様の姫ではありません。実は殿と結婚する前に亡き式部卿宮様の正室として入ったのですが、懐妊間もなく急な病でこの世を去られたのです。まだ正式に式部卿宮妃懐妊の発表をしていなかったものですから、分家の摂関家で当時大納言であられた殿が懐妊を承知の上で後妻として降嫁したのです。なくなられた先妻の間には二人の姫様と若君がおられたので、居辛く、こちらの宇治にあなたと生活していたのですよ。ですので、今回入内された式部卿宮の姫君とは従姉妹同士・・・。似ていたとしても不思議ではありません。本当に日に日に宮様に似てこられて・・・。お顔もそうですけれど、活発なところや物をはっきり言われるところ、後先考えずに行動されるところなど・・・。一応あの方とは好きあって結ばれたのですから。一年余りの夫婦生活でしたが、とても充実した生活でした。これでわかったかしら。綾姫。」
姫は立ち上がって自分の部屋に戻ると、なにやら文を書き出す。
『常康様 今はどうしても帰ることは出来ませんが、桜の花が咲く頃後宮の思い出の桜の木に下でお待ちいたしておりますので、決してわたしの事を忘れないようにお願いいたします。綾子』
この文を持って中将のいる部屋に戻ると、中将に文を渡す。
「このような時に申し訳ないのですけれど、今すぐこの文を清涼殿に届けていただけますか?」
中将は少し戸惑った様子いたが、すぐに束帯に着替えると、文を持って馬に乗り内裏に向けて走った。
第47章 帝の様子
頭中将は急いで大内裏に着くと、馬を預け内裏の清涼殿に向かった。帝はいつものように清涼殿の昼御座に座りいつものように公務をこなしている。皇后が里下がりをするまでは公務中であっても朗らかな明るい表情で公務を行っていたが、その後の帝は人が変わったように黙々と公務を行い、何か殿上人が気にくわない事を言うとよく立腹される。殿上人たちも触らぬ神に祟りなしというような表情で、御前に現れ用事を済ますとさっさと下がる。
「帝、頭中将殿が殿上願いを・・・。」
「晃か。わかった。頭中将の殿上許す。」
頭中将は殿上を許され御前に座る。
「頭中将殿、今日は休暇のはずだが・・・・。ん?なにやら覚えのある香りが・・・。もしや。」
頭中将は胸元から一通の文を取り出し侍従の晃に渡す。
「お待ちかねの皇后様からの文を預かってまいりました。御前失礼致します。」
「待て。これを直接受取ったか?綾子はどのような様子か?」
「はい、先程皇后様のご在所より帝に至急の用事があると・・・。女房の萩殿を通じてですが・・・。御簾越しにお伺いしたところ、まだ臥せっておいでの様子でした。」
「会いに行きたいのだが・・・。」
「いえ!私が皇后様に帝に一度会われてはどうかとお伺いしたところまだその気になれないと仰せでした。」
「しかしなぜお前は御簾越しとはいえ、綾子の側までいけたのだ!」
「それは・・・・私の祖母と皇后様の母宮様が姉妹であられ、別邸も隣同士ですので皇后様幼少の頃より存じ上げておりましたからでございましょうか・・・。」
(申し訳ありません・・・今は私のところにいると決して言えません、それも私の子を御懐妊など・・・帝・・・。)
「初耳だな・・・まあいい。ご苦労であった。今から返事を書くから綾子に渡して欲しい・・・。」
そういうと御料紙に文を書いて頭中将に渡した。
「これを皇后に。あとこれは中宮から預かった文だ。これもあわせて頼んだよ。せっかくの休みを邪魔させて悪かったね。ご苦労。」
頭中将は頭を深々と下げると退出していこうとする。
「頭中将殿、最近あなたはいつも良い香りをしておられる。姫でも迎えられたのですか?」
頭中将はビクッとして振り返らないまま答えた。
「はい、帝の妃方のような麗しい姫ではありませんが、以前申しておりました理想の姫と今宇治にて細々と暮らしております。間もなく子も生まれます。たぶん妻の香が私の束帯に移ったのでしょう。では御前失礼します。」
「そうか・・・余計に悪い事をしてしまったね。」
頭中将は軽く頭を下げて退出していく。帝は幸せそうな頭中将を見つめ、ため息をついた。
(どうすれば綾子は機嫌を良くしてくれるのであろうか・・・。きっと式部卿宮の聡子姫の入内の件は耳に入ったのだろう。こうして文をくれたのだから・・・。姿形が綾子に似ているという理由で入内させたが・・・所詮は他人。ここ数ヶ月聡子姫のもとに通ったが、綾子のいない寂しさを紛らわせるどころか虚しさばかり・・・。入内させたのは間違いだった。先日頭中将にもう一人姫を入内させたいと嘘もついたし・・・。何をやっても裏目に出る。今回のことはまだこうして綾子から文が来ただけマシかもしれないけど・・・。)
そう思うとさらに深くため息をつく。そしてこの晩も藤壺にいる更衣である式部卿宮の聡子姫のもとに行く。
(この聡子姫は綾子と同じ満面の笑みで迎えてくれる。そしてこの私を受け入れてくれる。一時的であるが、綾子といる気分にさせてくれる。聡子姫には悪いけれど・・・。)
藤壺に入ると懐かしい香りがする。
「藤壺、この香りは?」
「橘さんに帝のお好きな香りだからと教えていただいたのです。調合するのに大変でしたのよ。」
そういうととてもうれしそうな顔で帝を見つめたので、何も言わなかった。そして藤壺の寝所で帝は聡子姫にこの香について言う。
「藤壺、この香は今後一切使わないで欲しい。この香は綾子、いや弘徽殿のものだから・・・他の人には使って欲しくない。せっかく私のために焚いてくれたのでしょうが、わかっていただけますね。」
「はい・・・。」
聡子姫は残念そうな顔をした。
「帝、弘徽殿様はどのような方ですの?」
帝は少し戸惑ったが、いずれわかることと思い打ち明ける。
「私が東宮時代から寄り添っている初恋の姫君です。あなたにとてもよく似た。桜が咲く頃にこちらに戻ってきますよ・・・きっと・・・。きっとね・・・。」
そういうと帝は悲しそうな顔をして眠りについた。
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
絵が好きな人!?
ボタニカルアート教室に慣れてきまし…
(2025-10-25 19:13:07)
妖怪ウォッチのグッズいろいろ
今日もよろしくお願いします。
(2023-08-09 06:50:06)
戦闘機の写真を撮るのが好き!
三沢基地航空祭2025.09.21
(2025-11-25 06:30:06)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: