日本顎関節症リハビリ研究室 /より安定した快適咬合を求めて

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肥満と歯周病 サイトカインTNF-αと骨吸収


肥満と歯周病 サイトカインTNF-αと骨吸収
 少し前のnikkei.bpに歯周病と肥満に関するこんな記事がありました。

肥満の人は普通体重の人に比べて、歯周病に約1.5倍もかかりやすい--。今年1月に開かれた日本疫学会では、このようなショッキングな研究結果が、大阪府立看護大学総合リハビリテーション学部の吉田幸恵氏らの研究グループにより報告されました。(…)BMIと歯周病罹患との関連について分析したところ、肥満者は普通体重者に比べて歯周病にかかるリスクは1.55倍になり、年齢や喫煙習慣による影響を調整した後も、1.49倍と統計的に有意な差が認められました。(…)脂肪細胞から分泌されるTNF-α(腫瘍壊死因子)という物質は、骨吸収を促進する作用があることが知られています。 このため吉田氏らは、肥満の人では脂肪組織が分泌したTNF-αが歯槽骨の吸収にも関与し、歯周病を重症化させているのではないか、と推測しています。
 歯周病は、糖尿病をはじめ様々な全身疾患と深い関係があることが知られていますが、肥満との関係が疫学的に証明された、ということのようです。
 骨吸収については「歯槽骨吸収 抜いた歯を放置しちゃダメ」でも触れましたが、人間の骨というのはちゃんと代謝が働いていて、一定の条件の元にあると骨自体が「溶ける」ように後退していってしまいます。歯はもちろん大切ですが、それ以上に重要なのがそれを支える歯茎、そして歯槽骨、顎の骨です。骨が後退してしまうと義歯にするにしても土台が不足しますし、インプラントもままなりません。歯周病は一番肝心なこの部分を冒していく恐ろしい病気なのです。
 歯周病が進むと最後には歯がグラグラしてきて抜歯を避けられない状況になりますが、この時歯が抜けるというのは、結果として起こった現象にすぎず、本質ではありません。ここまで進行してしまった段階では、既に歯は「異物」になってしまっていて、生体の防御反応としてこれを排除しようとしているのです。そこまで放置しておいて「歯を抜くのは嫌だ」と言っても遅すぎます。取り除いてしまわないとかえって危険だからこそ、グラグラになるのです。
 TNF(Tumor Necrosis Factor腫瘍壊死因子)は、腫瘍細胞を壊死させる作用のある物質として発見されたサイトカインです。サイトカインとは、免疫の反応などによって細胞から体液中に分泌される蛋白質のことで、多くの種類が有ります。言うなれば細胞同士が情報を伝え合うための伝達物質のようなものです。
 免疫の話は難しくていつもよくわからないのですが、TNF-αという物質には結果として骨吸収を促進させてしまう働きがあるようです。もちろんただこれだけというわけではないでしょうが、切り出した一つの局面として、歯周病にとってはマイナスになってしまう、ということでしょう。

 歯周病にならなくても肥満は避けたいものですが、歯周病は見た目の美醜などとは比較にならないような重大事です(見た目の美醜を気にするのも決して間違ったことだとは思わないですし、実際わたしも気にしますが)。喫煙や定期的なケアの有無などのファクターの方がより大きいことは間違いないでしょうが、マイナスな要素はできるだけ減らしておきたいものです。
 偉そうなことを言いながら、しばらくケアに行っていません。言うまでもなく、口腔管理は予防が第一であり、長期的にはコスト的にも安く済みます。
 新しい職場の近くで、予防歯科に力を入れている歯医者さんを探そうと思っています。見分けるポイントは歯科衛生士さんの数、使い方です。予防ケア専用のチェアがあるところなら尚良いです。
 歯科衛生士さんが生き生きしていない歯医者さんは避けましょう。「お手伝いの女の子」みたいな使い方しかできないドクターは絶対ダメです。



http://ish.parfe.jp/mt/archives/001002.html



『基礎から最新トピックスまでのサイトカインがわかる』 宮島篤 羊土社 4,095円

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