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『きっかけはデュエル・マスターズ』
私にとって、デュエル・マスターズはただのカードゲームではなかった。デュエル・マスターズは私の人生を大きく変えたと言ってもいいだろう。
先に断っておくが、私は全国大会で入賞するような有名なプレイヤーではない。デュエルロードで入賞する事はあったが、平凡な中級者レベルのデュエリストでしかない。
私にとって、何故デュエル・マスターズがただのカードゲームではないのか。それは、これから話す私と妻の話を聞いてもらえば判ると思う。
妻と結婚する一年ほど前だっただろうか。その頃の私は、カードにも触っておらず半ば引退したような生活を送っていた。デッキを作ろう、カードを買おうと思っても、仕事が忙しかったり同僚との飲み会の方が楽しかったりして、やる気を失っていったのだ。
ある日曜日、ふとしたきっかけで馴染みの玩具屋へ出かけてみた。いや、馴染みだったと言うべきかも知れない。今は、まったく顔を出していないのだから。
「おう、いらっしゃい!」
店長は気さくな人物だ。久しぶりに来た私を覚えていたらしい。
店長だけではなかった。デュエルロードやフリーデュエルで何度も対戦した子供達も、私の事を覚えている。私の姿を見ると、みんなこちらに寄って来て色々な質問をされた。新しいカードの話や、今、強いデッキのタイプについて。他には、殿堂入りして欲しいカードについても聞かれた。
だが、どれも今の私にはついていけない話題だった。
そうか、こうやって遠ざかっていくのだな。よく考えたら、子供のための遊びを社会人にもなって続けていく方がおかしいのだ。プレイしている連中がそう思っていなくても、世間一般の常識ではそうだろう。
居心地の悪さを感じ始めた私が店から出ようとした時、デュエルスペースで対戦している女性を見かけた。女の子が対戦している事もたまにあるが、今回は子供ではない。女性だ。しかも、女性一人である。珍しい事もあるもんだ。
「ああ、彼女が気になった?結婚相手探しに来るのなら、場所が違うんじゃないか?」
店長にツッコミを入れてから、彼女が何者か聞く。
「ああ、あの子?この店の今のチャンピオンだよ。それも負け知らずの」
店長は、「今の」というところを強くして言う。元チャンピオンだった私の魂を揺さぶるような言葉だった。
一体、どんな奴なのだろう?ここで帰ったら、男ではない!
私は、古臭い火自然の速攻デッキを手にしてその女性の前に座った。
「あ…あれ?先輩じゃないですか!」
チャンピオンの女性は、驚いた声でそう言った。一瞬、何を言っているのかと混乱したが、思い出す。
彼女は大学の時の後輩だ。友達同士の関係で(それ以上の関係にはならなかった事をここに記しておく)お互い、社会人になってからも何度か会っていた。
デュエル・マスターズは私が彼女に教えたものだが、彼女に教えた直後から、私達が会う機会はなかった。
「へぇ、チャンピオンって誰かと思ったけど、君だったのか」
「そうなんですよ!その人、もうずっと優勝してるんです!倒して下さいよ、元チャンピオン!」
元、は余計だと言いたいが、今は半分引退しているのだから仕方がない。
「先輩、強いんですか?」
「ああ。君に勝って、元チャンピオンの『元』の字を消そうと思っている」
会話はそれだけで充分だった。私達は、勝つためにカードに手をかける。
…と、ここまでは良かった。だが、その後が最悪だった。古いカードと新しいカードを織り交ぜて戦う彼女の戦い方に対して、新しいカードを知らない私は、何度もプレイを止めてカードの内容を確認しなければならず、私を応援していた子供達も白けていった。
結果は、言うまでもなく惨敗。その後も、馴染みの子供達と対戦したが、結果は似たようなものだった。
「イエイ!今日も圧勝!あたしに大会で勝てる子がいたら、結婚してあげてもいいよ!」
彼女はノリノリである。負け知らずとは恐ろしい…。
気がつくと、カードを大量に買って帰路についていた。「結婚」という言葉に反応したのかもしれない。大学時代の私は、彼女にほのかな恋心を抱いていたようなものだから。
それと同時に、プレイヤーとしてのやる気が蘇ってきたのだ。これは、やるしかない。チャンピオンの名は私が取り戻す。
その日から、私の努力は続いた。ネットなどで新しいカードの情報も調べた。今、流行しているデッキや戦術も調べた。
それでも勝てそうにないので、昔使っていた強いが、あまりにもおもしろみのないデッキを使おうとしたら、切り札が使用禁止カードになっていた。デュエル・マスターズにも禁止カードができたなんて知らなかった。長い間離れていたのだから、知らない事があっても当たり前か。
デッキを改良して、デュエルロードにも再び参戦した。復帰第一戦は惨敗。みんな、大会用のデッキは恐ろしくチューンされている。何よりも勝つ事を優先しているからだ。
だが、私も元チャンピオン。地に堕ちたとしても、こんなところで引き下がるわけにはいかない。
復帰第二戦からは、徐々に勝ち始めた。復帰第三戦では、二位になれた。だが、駄目なのだ。彼女に勝って一位にならなくては…!
復帰第四戦。復帰してからここまで半年ほどかかったと思う。
デュエルロード、最後のデュエル。私と彼女の頂上決戦だ。
勘と経験で判る。このデュエル、勝つのは私だ。
そう思った瞬間、彼女がにやっと笑う。彼女もまた、勝利を確信していたのだ。
「スピードアタッカー、二体召喚!先輩のシールドは一枚だから、これで終わりですよね!?」
しまった!最後まで油断はできない。それがデュエルだったはずなのだ。最後のシールドがブレイクされ、負けを覚悟した私はそのカードを見る。
「じゃ、もう一体で…」
「いや、待って…。シールドトリガー!バリアント・スパーク!」
最後のシールドはシールドトリガーだった。私のバトルゾーンにはクリーチャーが一体残っていて、彼女にはシールドもブロッカーもない。この時点で、私の勝ちが確定する。
「やった!チャンピオン復活だ!」
そうだ。ここで、私はチャンピオンとして返り咲いたのだ。そして…。
「く~、先輩強いですよ。それじゃ、約束ですね…」
「約束…?何かあったっけ?」
デュエルに熱中していた私は、そんな事があったかどうか忘れていた。
「おいおい、それを女に言わせるのは野暮ってもんじゃないか。思い出せよ」
店長に言われて、私は彼女をこの店で初めて見た時の言葉を思い出す。
『あたしに大会で勝てる子がいたら、結婚してあげてもいいよ!』
あれが…約束か?
「ちょっと待った!け、結婚ってそんな簡単に決めていい事じゃないだろ!お互いをよく知って、二人が愛し合っているか確認して、それからでも…」
そこで、私は言葉を止める。彼女が私をどう思っているか、知らないけれど、私は彼女がすきじゃないか。それに、彼女の事もよく知っている。デュエルロードで対戦した後、食事にも行った。これは付き合っているようなものではなかったかな?
「……と、とりあえず、いきなりは無理だから…まずは彼氏彼女の関係からでいいかな?」
それが私達の結婚のきっかけだった。
今も、私達は夫婦デュエリストとして、この店にはよく遊びに来ている。ここで告白すると成功する、なんていう子供じみた噂が流れいてるようだ。あながち、嘘ではない。
デュエル・マスターズのお陰でたくさん友達ができたなんていうのは、マンガの中での話かもしれない。それを笑い飛ばすかどうかは、それぞれの自由だ。
私は、デュエル・マスターズのお陰で人生の伴侶を見つけた。この素晴らしいカードゲームと、私のやる気を呼び起こした妻に今も感謝している。
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