にこにこタウン

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ありがとうあかちゃん(1)


 「○○さん、あかちゃんの心臓が動いていないみたい」と先生に不安げに言われた。もう一度確認してもらったが、やっぱりあかちゃんの心臓は動いていなかった。

 その時、妊娠14週、妊娠4ヶ月半に入っていた。妊娠12週以前だと道具を使ってあかちゃんを体外に出すらしいのだが、12週を超えているので陣痛をつけてあかちゃんを体外に出さなければいけないらしい。土曜日の午後だったので、月曜日に総合病院に紹介状を書いてもらい、そちらへ行くことになった。


 3月28日(月)、いつもの産婦人科ヘ行き紹介状を書いてもらう。紹介状をもらうだけだったのに30分待った。
 やっともらえた紹介状を手に総合病院ヘ行った。この病院も、とても混んでいた。 午前9時50分に到着、受け付けを済ませて産婦人科へ行く。ひたすら待つ。11時に診察してもらえればいいなぁと思った。しかし、その時間はとっくに過ぎていた。せめて午前中には診察してもらいたいと思った。結局、診察室に入ったのは11時59分だった。ギリギリセーフ。

 てっきり男の先生かと思っていたが、優しそうな女の先生だった。「朝、○△先生から電話でを受けてお話は聞いております」と先生は言った。あかちゃんが自分で出てくるのを待っていると、1ヶ月経っても出てくるかどうか分からないので、子宮口(こう)を広げて陣痛をつけてあかちゃんを出しましょうとという説明を受けた。「心の準備はできていますか」と聞かれ一瞬どきっとしたが「はい」とうなずいた。「もういちどエコー(超音波)検査で確認して下さるんですよね」と聞くと「もちろんです」と先生は言った。
 ベッドに寝てエコー検査をする。「よく画面を見せてください」と伝えた。しっかりとあかちゃんの映像を見た。白黒のあかちゃんの映像。もう最後だと思うと、涙が止まらなかった。

あかちゃんがだめになったことを聞いたときから今まで、全然涙を流したことがなかった。自分でも不思議だった。「泣いたらちょっとは楽になれるのに」なんて思っていた。心の底で「泣いちゃだめだよ」と思っていたのかもしれない。

 「やっぱり心臓が動いていませんね」と先生が言う。泣きながら「はい」とうなずく。ちょっと落ち着いてから再び説明を受ける。すぐにラミナリアというものを子宮に入れるらしい。ラミナリアは水分を含むと膨らむ棒のようだ。丸1日かけて子宮口を広げ、陣痛をつけてから明日の昼頃に「あかちゃんとさよなら」をするらしい。
 ラミナリアを入れる間、相方(主人)に診察室から出て行ってもらった。先生の「どんどん入れて」の声。何本も入れた。「もういいよ」と聞こえ、ほっとする。「サイズと本数を記入しておいてね」と聞こえた。結局、Lサイズを4本入れたらしい。とても痛かった。

 「ナプキンは持っていますか」と聞かれ「いいえ」と答える。「これから御手洗いに行くとき、清浄綿(せいじょうめん)で おしもの部分を清潔にし下さいね」と言われる。退院してから使うと思っていたが、入院前から使うとは思わなかった。通常出産だと、ナプキンも清浄綿も支給されるんだよね。売店で買ってこなくちゃ。

 ラミナリアを入れてしばらく待つ。ずいぶん経った。「病室が用意できるまでしばらく待って下さい」と言われ30分待った。その間に、相方に入院用荷物を車から持ってきてもらった。

 病室を案内してもらった。笑顔の素敵な優しい看護師さんが来てくれた。身長、体重、血圧、体温を測定して病歴、妊娠歴などを聞かれた。質問を受けていて、ちょっと涙ぐむと「大丈夫?」と声をかけてくれた。自分の口からは「大丈夫」という言葉が出るのに、涙が止まらなかった。「がまんしていたんだね」と看護師さんが言った。そうだったのかな。ちょっとは泣いてもいいよね。 

やっと昼食を食べられる。とてもおなかがすいたよ。売店でお弁当、飲み物、清浄綿、ナプキンを買った。お弁当を食べたのは午後2時10分だった。おいしかった。

 明日の午前9時に産科病棟て行き、昼頃に「あかちゃんとお別れ」をするらしい。「他のあかちゃんを見るとつらいと思うけど、ごめんね」と先生も申し訳なさそうに言っていた。先生の優しい顔を見たら、また涙が止まらなくなった。
 てっきり、今日が「あかちゃんとお別れ」の日だと思っていた。心臓が動いていなくても、もう一日だけ一緒にいられることがちょっぴり嬉しかった。

 明日にそなえてしっかり寝よう。



      ありがとうあかちゃん(2)  につづく

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